英会話教室のポイント一括購入契約を「中途解約」した受講者が、割高単価で再計算する精算条項の無効と返金を勝ち取った事例

外国語会話教室(特定継続的役務提供事業者)と有効期限3年・150ポイント・総額29万0580円(1ポイント単価2050円・キャンペーン10%割引)の受講契約を結んだ原告が、36ポイントを消費した時点で特定商取引法49条1項に基づき中途解約し、契約時単価に基づく未消化分精算金17万6672円の返還を求めた訴訟です。被告事業者は「中途解約時は購入数量割引を遡って解消し、消化済みポイント数に対応する割高な単価(1ポイント3800円)で消化済み受講料を計算する」との約款規定(本件規定)を主張しましたが、京都地方裁判所は、…

この判例と自分の状況を照合(継続購入・英会話の中途解約返金)

基本情報

判決結果
原告勝訴
カテゴリ
消費者トラブル
裁判所
京都地方裁判所第2民事部
判決日
2006-01-30

裁判所・判決日: 京都地方裁判所第2民事部 / 2006-01-30

判決結果: 原告勝訴

カテゴリ: 消費者トラブル

主な争点

  • 特定商取引法49条2項1号・7項に基づく中途解約精算規定の有効性 - 特定継続的役務提供契約(語学教室)の中途解約時に、契約締結時の単価(2050円)より高額な単価(3800円)を用いて提供済み役務の対価を算定する約款規定が、特定商取引法49条2項1号の趣旨に反し同法49条7項により無効となるか否か。
  • 契約時単価に基づく未消化受講料の不当利得返還額の算定 - 精算規定が無効となる場合に、特定商取引法49条2項1号イ(提供済み役務の対価)およびロ(通常生ずる損害の額・契約残額の20%)に従って算定される返還額はいくらか。

裁判所の判断ロジック

  • 提供済み役務の対価算定における「契約時単価」の原則: 契約締結時ないし前払金受領時に役務の単価が定められ、これに基づいて前払金が決定されていた場合、中途解約時の提供済み役務の対価(特定商取引法49条2項1号イ)は原則として契約締結時の単価に従って算定すべきである。
  • 数量割引を解消して割高単価で再計算する精算条項の無効性: 合理的な理由なく契約時単価(2050円)より高額な単価(3800円)を用いて提供済み役務の対価を算定することは、実質的に法定上限を超える違約金を請求するもので、特定商取引法49条2項1号の趣旨に反し同法49条7項により無効である。
  • 営業上の不利益は法定の解約手数料(上限5万円または残額20%)で填補すべきこと: 事業者が主張する数量割引制度の維持や中途解約による営業上の不利益は、同法49条2項1号ロの「通常生ずる損害の額(5万円または契約残額の20%のいずれか低い額)」の請求によって対処すべきであり、単価を引き上げる合理的理由にはならない。

時系列

  1. 2001/10/25 - 英会話教室の特定継続的役務提供契約を締結(150ポイント一括購入)

    有効期限3年、150ポイント(単価2050円・10%割引)、総額29万0580円を一括支払いして受講を開始した。

  2. 2004/10/06 - 36ポイント消化時点で中途解約を通知

    特定商取引法49条1項に基づき契約を解除。教室側は単価3800円で消化分を12万9276円と算定し、13万0580円のみ返還すると主張した。

  3. 2006/01/30 - 京都地方裁判所判決(原告全面勝訴・17万6672円返還命令)

    割高単価による解約精算規定を特定商取引法49条7項により無効とし、契約時単価に基づく返金額17万6672円全額の支払いを命じた。

実務上の学び

  • 英会話・語学教室などの継続ポイント購入は特定商取引法49条でいつでも中途解約・返金請求できる: 期間2か月超・金額5万円超の語学教室・エステ・学習塾などの特定継続的役務提供契約では、消費者は理由を問わず中途解約でき、事業者が控除できる金額は「契約時単価による提供済み役務の対価」+「解約損料(残額の20%または5万円の低い方)」に制限されます。
  • 「まとめ払い割引を解約時に取り消して高い通常単価で引き直す」規約は無効: 長期・大量ポイント購入で単価を割り引いていたとしても、中途解約時に消化分を高額単価(本件では2050円→3800円)に置き換えて返金額を減らす条項は、中途解約権を制限する脱法的な違約金条項として特定商取引法49条7項により無効となります。
  • 解約手数料(残額の20%)も「契約時単価で計算した未消化残額」を基準に再計算される: 消化済み受講料を割高単価で水増しした計算が無効となる結果、解約手数料も契約時単価による消化分(6万9741円)を差し引いた正しい未消化残額(22万0839円)の20%(4万4167円)を上限として精算されます。

よくある質問

本件はどのような契約に関するどのような請求の事案ですか?

1 本件は,被告との間で語学の教授に関する特定継続的役務提供契約を締結した 原告が,この契約を中途解約したとして,不当利得返還請求権に基づき,既払いの 受講料の返還を求める事案である。

特定商取引法49条が中途解約制度および請求上限額を規定した趣旨について、裁判所はどのように述べていますか?

そして,特定商取引法が同法49条において,中途解約制度を設けるとともに, 中途解約に伴い役務提供事業者が請求し得る金額の上限を規定した趣旨は,特 定継続的役務提供取引においては,契約期間が一定程度長期にわたるため,役 務受領者の側に事情変更が生じ,引き続き役務の提供を受けることが困難とな る状況が発生した場合,取引の対象である役務提供の内容を客観的に確定する ことが難しいことや提供される役務の効果や目的の実現が不確実であること等か ら,役務受領者が期待した役務の提供又は効果等が得られず,以後の役務提供 を望まない場合等において,役務受領者が契約解除を希望しても,役務提供事 業者がこれに応じないなどの紛争が多発していたことを受け,中途解約の要件や 中途解約に伴い役務提供事業者が請求し得る金額の上限を明確化したことにあ ると解される。

中途解約時に提供済み役務の対価を算定する単価について、裁判所はどのような原則を示しましたか?

契約締結時ないし前払金の受領時に役務の対価に関する単 価が定められており,この単価に基づいて前払金の金額が決定されていた場合 には,原則として,この契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価に従 って上記提供済み役務の対価を算定するべきである。そして,合理的な理由なく 契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いること は,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払金の受領時に適用さ れた単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合に は,実質的に,役務提供事業者に同法49条2項1号が許容する金額以上の請求 を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員 を請求するものであるから,同法49条2項1号の趣旨に反するものであり,同法 49条7項により無効であるといわなければならない。

契約時に1ポイント2050円であった単価を中途解約時に3800円として算定する本件規定について、裁判所はどう結論づけましたか?

(2) 以上を前提に判断するに,本件規定は,中途解約時に,契約時に適用された単 価より高額な単価を用いて提供済み役務の対価を算定するものであり,本件原 告に関しても,被告の主張によれば,契約時には1ポイント当たり2050円(ただ し,10パーセントの割引がされている。)の単価を用いて受講料を算定している のに対し,中途解約時には1ポイント当たり3800円の単価を用いて提供済み役 務の対価を算定している。そして,本件全証拠によっても,かかる算定方法を採 用するに足りる合理的理由があるとは認められないから,本件規定は,特定商取 引法49条2項1号の趣旨に反するものであり,特定商取引法49条7項により無 効であるといわなければならない。

特定商取引法49条2項1号イおよびロに従って算定された提供済み役務の対価、中途登録解除手数料、および被告が返還すべき金額はそれぞれいくらですか?

5 以上を前提に,特定商取引法49条2項1号イに従って提供済み役務の対価相当 額を算定すると,本件契約締結当時の単価である1ポイント当たり2050円に,原告 が消化した36ポイントを乗じ,さらに10パーセントの割引を適用して,これに消費税 相当額を加えた6万9741円であり,これが被告が取得できる提供済み役務の対価 相当額である。 また,被告が原告に請求する中途登録解除手数料についても,その前提となる提 供済み役務の算定方法に関する規定が無効であることから,その限度で無効であ るといわなければならない。したがって,上記で算定した提供済み役務の対価相当 額を前提に,第2の2(4)ウ(エ)に摘示した,被告の中途登録解除手数料の算定方法 (この算定方法自体は,特定商取引法49条2項1号ロ,特定商取引法施行令15条 別表第5と同一であるから,これらの規定に違反するものではないと解される。)に 沿って算定すると,被告が原告から受領した29万0580円から上記6万9741円を 控除した22万0839円の2割に相当する金額は4万4167円であり,これが5万円 を超えないため,4万4167円が被告が原告に請求できる中途登録解除手数料とな る。 よって,被告が原告に返還すべき金額は,前記29万0580円から,上記6万974 1円及び4万4167円を差し引いた17万6672円となる。

関連する論点

  • 定期購入・サブスク解約と解約金条項の判断ライン

    英会話教室のポイント継続購入の返金(特定商取引法49条)、サブスク・定期契約の自動更新と解約金(消費者契約法9条1号・10条)、キャンセル不可特約について、返金を認めた判例(6676・82664・84321)と認めなかった判例(82202・93729)を判決原文の比較表で整理します。

結論が分かれる判例

判決文抜粋

  • 1 被告は,原告に対し,17万6672円及びこれに対する平成16年12月15日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。
  • 1 本件は,被告との間で語学の教授に関する特定継続的役務提供契約を締結した 原告が,この契約を中途解約したとして,不当利得返還請求権に基づき,既払いの 受講料の返還を求める事案である。
  • (ア) 消化済み受講料 消化済み受講料を算定する際に用いるべきポイント単価は,役務提供 済みポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価とし,デイ タイム登録,スタンダード登録,24時間登録の登録種別に該当する単価 とする。ただし,消化済み受講料は役務提供済みポイント数以上の最も 近いコースのポイント総額を上限とする(以下「本件規定」という。)。
  • 提供済み役務の対価の精算とい う行為の性質に照らせば,役務提供事業者が,役務受領者から受領した前払金 につき,提供済み役務の対価に相当する部分を控除して当該役務受領者に返還 する場合において,契約締結時ないし前払金の受領時に役務の対価に関する単 価が定められており,この単価に基づいて前払金の金額が決定されていた場合 には,原則として,この契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価に従 って上記提供済み役務の対価を算定するべきである。そして,合理的な理由なく 契約締結時な…
  • (2) 以上を前提に判断するに,本件規定は,中途解約時に,契約時に適用された単 価より高額な単価を用いて提供済み役務の対価を算定するものであり,本件原 告に関しても,被告の主張によれば,契約時には1ポイント当たり2050円(ただ し,10パーセントの割引がされている。)の単価を用いて受講料を算定している のに対し,中途解約時には1ポイント当たり3800円の単価を用いて提供済み役 務の対価を算定している。そして,本件全証拠によっても,かかる算定方法を採 用するに足りる合理的理…
  • 5 以上を前提に,特定商取引法49条2項1号イに従って提供済み役務の対価相当 額を算定すると,本件契約締結当時の単価である1ポイント当たり2050円に,原告 が消化した36ポイントを乗じ,さらに10パーセントの割引を適用して,これに消費税 相当額を加えた6万9741円であり,これが被告が取得できる提供済み役務の対価 相当額である。 また,被告が原告に請求する中途登録解除手数料についても,その前提となる提 供済み役務の算定方法に関する規定が無効であることから,その限度で無効で…

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