釣り具販売会社が画像の無断転載を訴えるも、特定費用の全額回収は認められず

自社製品の写真をネットオークションに無断転載された会社が、著作権侵害を理由に損害賠償を請求しました。裁判所は侵害を認めましたが、相手を特定するための「発信者情報開示手続」に要した費用の全額を相手に負担させることは認めませんでした。

基本情報

判決結果
原告一部勝訴
カテゴリ
著作権・AI
裁判所
知的財産高等裁判所
判決日
2025-06-02

裁判所・判決日: 知的財産高等裁判所 / 2025-06-02

判決結果: 原告一部勝訴

カテゴリ: 著作権・AI

裁判所の判断ロジック

  • 著作権侵害の認定: インターネットオークションへの出品に際し、他人が撮影した写真を無断で掲載した行為は、著作権(複製権および公衆送信権)を侵害する不法行為に当たると判断されました。
  • 開示費用の因果関係: 匿名投稿者を特定するための発信者情報開示手続に要した費用は、不法行為と相当な因果関係がある範囲に限定して賠償の対象となるべきであり、必ずしも支出した全額が認められるわけではないとされました。
  • 損害賠償額の妥当性: 被害者救済の必要性は考慮しつつも、賠償すべき損害の範囲は事案の難易度や諸事情に照らして相当な範囲にとどめるのが適当であるとして、控訴人の全額賠償の訴えは退けられました。

時系列

  1. 2022/09/01 - 著作権侵害の発生(写真の無断掲載)

    被控訴人が、控訴人が著作権を有する釣り具の写真9点を複製し、インターネットオークションサイトに無断で掲載した。

  2. 2022/09/01以降 - 発信者情報開示手続の実施

    投稿者を特定するため、控訴人が弁護士を通じて発信者情報開示手続を行った。被控訴人が当初「オークションを利用したことがない」と虚偽の回答をしたこともあり、裁判所の手続が必要となった。

  3. 2023年(令和5年) - 第1審(東京地裁)への提訴

    控訴人が被控訴人に対し、著作権侵害に基づく損害賠償として、開示手続費用などを含む151万2500円の支払いを求めて提訴した。

  4. 2024年(令和6年) - 第1審判決と控訴の提起

    東京地裁は、控訴人の請求のうち36万8000円のみを認容した。控訴人は、開示手続費用の全額が損害として認められるべきであるとして、敗訴部分の取り消しを求めて控訴した。

  5. 2025/04/09 - 控訴審の口頭弁論終結

    知的財産高等裁判所において、開示手続費用の損害賠償に関する相当因果関係などの補充主張がなされ、審理が終了した。

  6. 2025/06/02 - 控訴審判決(本件判決)

    裁判所は、第1審の判断を維持し、控訴人の請求(増額分)を棄却。控訴費用は控訴人の負担とする判決を言い渡した。

実務上の学び

  • 他者が撮影した写真の無断転載による権利侵害: インターネットオークションサイト等への出品に際し、他者が撮影した商品の写真を無断で掲載する行為は、著作権(複製権および公衆送信権)の侵害にあたり、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性がある。
  • 発信者情報開示手続費用の賠償範囲: 匿名の権利侵害者を特定するために要した発信者情報開示手続費用(弁護士報酬等)について、裁判所はその全額を損害として認めるとは限らず、不法行為と相当因果関係があると判断される範囲に制限される場合がある。
  • 裁判所による損害賠償額の客観的算定: 著作権侵害を理由とする損害賠償請求において、認められる賠償額は原告が主張した金額の全額とは限らない。裁判所は事案の具体的な事情を考慮し、相当因果関係の認められる範囲内で適正な金額を算定する。

関連する論点

判決文PDF(出典)