YouTuberらが競合相手による権利侵害の通報を不当として訴えた事件
動画投稿者である原告らが、被告によって行われたYouTubeへの権利侵害通知を不当な妨害として損害賠償を求めた事案です。裁判所は、公式フォームを用いた侵害通知は原則として正当な手続きであり、本件において不法行為を構成するほどの違法性は認められないとして、請求を棄却しました。
基本情報
- 判決結果
- 原告敗訴
- カテゴリ
- SNS・ネット
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 判決日
- 2025-03-11
裁判所・判決日: 東京地方裁判所 / 2025-03-11
判決結果: 原告敗訴
カテゴリ: SNS・ネット
主な争点
- 被告による各通知行為の違法性(不法行為の成否) - 被告がグーグル(YouTube)の専用フォームを通じて行った、著作権侵害・プライバシー侵害・名誉毀損の各通知が、原告らの動画投稿活動を不当に妨害する違法な不法行為(民法709条)に該当するか。
- 本件各動画による権利侵害の存否と通知の正当性 - 原告らが投稿した動画が、被告の主張するように実際に著作権やプライバシー、名誉を侵害するものであったか。または、被告が侵害を信じるに足りる相当な理由があったか。
- 損害の発生および因果関係 - 被告の通知によって動画の非公開化等が生じた結果、原告らに広告収益の喪失などの損害が発生し、その損害と被告の通知行為との間に相当因果関係が認められるか。
- 名誉毀損の成否 - 投稿が原告の社会的評価を低下させるか、また公益目的などの違法性阻却事由があるかが争われました。
- プライバシー侵害の成否 - 親族の前科等の事実を公表することが、原告のプライバシー権を侵害するかが争われました。
裁判所の判断ロジック
- 公式通報の正当性: プラットフォームが公式に用意した侵害通知フォームを利用して権利を主張する行為は、原則として正当な手続きであり、直ちに違法とはみなされないと判断されました。
- 不法行為の不成立: 被告による通知が原告らの権利を不当に侵害し、損害賠償を命じるほどの違法性を有することを裏付ける客観的な証拠が不十分であると結論づけられました。
- 請求棄却の判断理由: 原告らが主張する著作権侵害やプライバシー侵害への通知行為について、民法上の不法行為の要件を満たさないとして、損害賠償請求はすべて退けられました。
時系列
- 2023/01/01 - 原告らによるYouTube動画の投稿
YouTuberである原告A、B、Cが、それぞれの運営するチャンネルにおいて複数の動画を投稿・公開していました。
- 2023/05/08 - 被告による権利侵害の通知
被告が、原告らの動画について著作権侵害、プライバシー侵害、または名誉毀損に該当すると判断し、Google社のフォームを通じて削除等の通知を行いました。
- 2023/05/08 - 損害賠償請求訴訟の提起
原告らが、被告による通知行為は不当な妨害であり違法であると主張し、民法709条(不法行為)に基づき損害賠償を求める訴えを提起しました。
- 2024/12/18 - 口頭弁論の終結
裁判所において、当事者双方が主張と証拠を出し尽くし、判決前の審理段階が終了しました。
- 2025/03/11 - 判決の言渡し
東京地方裁判所は、原告らの請求をいずれも認めない(棄却する)との判断を下し、被告側の主張が通る形となりました。
実務上の学び
- プラットフォーム上の通知機能利用と不法行為責任: 著作権侵害やプライバシー侵害を理由に、動画共有サイト運営者が提供する専用フォームを通じて行われる通知は、直ちに不法行為を構成するものではない。運営者が定める規約や目的に基づき、権利侵害の疑いがある事項について通知を行うことは、正当な権利行使の範囲内と解される傾向にある。
- 通知による不利益発生と賠償責任の相関: 通知の結果として動画が非公開となり、投稿者に広告収入の減少といった損害が生じた場合であっても、通知内容に客観的な根拠や相当性が認められる限り、通知者に対する損害賠償請求は認められない。権利保護のための仕組みを利用する行為には、広範な裁量が認められることが示唆されている。
- コンテンツ投稿における権利関係の明確化: 通知行為の正当性が争点となった際、権利関係の客観的な整理状況が裁判所の判断に影響を及ぼし得ることが示唆されている。プラットフォームの基準と法的基準の双方が考慮される傾向にある。
よくある質問
本件の判決の主文(裁判の結論)はどのような内容ですか。
1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。
原告らが本件の損害賠償請求の根拠とした法律の規定は何ですか。
民法709条
原告らは、被告のどのような行為が違法であると主張していますか。
被告がインターネット上の動画共有サイトであるYouTube(以下「ユーチューブ」という。)を運営するGoogle LLC(以下「グーグル」という。)に対して、原告らがユーチューブにおいて投稿した動画について、ユーチューブにおける動画の投稿が著作権侵害、プライバシー侵害又は名誉毀損に該当することを通知するためのフォームから通知をしたことが違法である
本件における「本件各通知フォーム」とは何を指しますか。
「著作権侵害通知フォーム」、「プライバシー侵害通知フォーム」又は「名誉毀損通知フォーム」
原告Aは、被告に対し、遅延損害金の起算日をいつからと求めていますか。
令和5年5月8日から支払済みまで
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判決文抜粋
- 1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする。
- 原告らがYouTubeに投稿した動画に対し、被告が著作権侵害、プライバシー侵害又は名誉毀損に該当する旨の通知を運営(Google LLC)へ行ったことについて、その通知が違法であると主張して損害賠償を求めた事案である。
- YouTubeに動画を投稿した者は、正当な理由がないのに動画を削除されないこと等について、法律上保護される利益を有する。侵害の事実がないのに通知フォームから通知することは、投稿者の利益を侵害するものとして違法である。
- 被告は、被告を批判する動画を投稿する者に不当な圧力をかける目的で著作権侵害通知フォームを悪用した。登録者数100万人を超えるユーチューバーとして、通知により無条件で動画が削除されることを知りながらあえて行ったものである。
- Googleは、通知を受けた場合に動画を自動的に削除するのではなく、独自の裁量により判断を行っている。利用規約に基づきコンテンツを削除できる独自の権限がある以上、通知が直ちに違法になることはない。
- 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。