参議院議員が「中国人秘書」との関係報道で週刊文春に対し名誉毀損訴訟、一部勝訴

参議院議員が、週刊文春による「中国人秘書と親密」との報道で名誉を毀損されたとして、週刊文春を提訴した裁判です。裁判所は、記事が議員の社会的評価を低下させる名誉毀損にあたると認め、週刊文春に275万円の支払いを命じました。

基本情報

判決結果
原告一部勝訴
カテゴリ
SNS・ネット
裁判所
東京地方裁判所
判決日
2024-09-06

裁判所・判決日: 東京地方裁判所 / 2024-09-06

判決結果: 原告一部勝訴

カテゴリ: SNS・ネット

主な争点

  • 本件記事による名誉毀損の成否 - 週刊誌の記事内容(参議院議員と中国人秘書の親密な関係性や行動描写など)が、原告である参議院議員の社会的評価を低下させる名誉毀損行為に該当するか否か。
  • 摘示された事実の真実性または真実と信じるに足りる相当な理由の有無(違法性阻却事由) - 被告が本件記事で摘示した、原告と中国人秘書との関係性や具体的な行動に関する事実が真実であったか、または被告が真実と信じるに足りる相当な取材と根拠を有していたか。名誉毀損が成立する場合でも、これらの要件を満たせば違法性が阻却されるため、重要な争点となる。
  • 名誉毀損が認められる場合の損害額 - 本件記事による名誉毀損が認められる場合、原告が被った精神的損害および弁護士費用相当額として、どの程度の賠償額が適切か。原告は3300万円を請求したが、裁判所が認定する損害額が問題となった。
  • 名誉回復処分(謝罪広告の掲載)の必要性および相当性 - 名誉毀損による損害賠償に加えて、民法723条に基づく名誉回復処分として、被告に対し謝罪広告の掲載を命じる必要性およびその内容が相当であるか否か。

裁判所の判断ロジック

  • 名誉毀損成立: 裁判所は、国会議員である原告が中国人秘書と「親密な関係」にあり、秘書に対する通常の行動を超えると報じた週刊誌記事が、原告の社会的評価を低下させるものであったと認定し、名誉毀損の成立を認めました。
  • 賠償額を認定: 裁判所は名誉毀損による原告の損害発生を認め、被告に対し275万円の支払いを命じました。これは、原告が請求した3300万円の一部が認められたものです。
  • 謝罪広告棄却: 原告が名誉回復措置として請求した謝罪広告の掲載については、裁判所はこれを棄却しました。これにより、謝罪広告による名誉回復の必要性までは認められませんでした。

時系列

  1. 2004/07 - 原告が参議院議員に初当選

    本件原告が参議院議員に初当選し、公人としての地位を確立しました。

  2. 2021/12/16 - 週刊文春が問題の記事を掲載

    被告が発行する週刊誌「週刊文春」に、「自民「大臣候補」が溺れる中国人秘書とカネ」と題し、原告が「中国人秘書と親密」などと報じる記事が掲載されました。

  3. 2021/12/16 - 原告が名誉毀損による損害賠償等を請求し提訴

    週刊文春の記事により原告の社会的評価が低下したとして、原告は被告に対し、不法行為の日である記事掲載日(令和3年12月16日)からの謝罪広告掲載と合計3300万円の損害賠償を求める訴えを提起しました。

  4. 2024/07/08 - 口頭弁論終結

    裁判所において、当事者である原告と被告の主張および証拠調べが全て出揃い、口頭弁論が終結しました。

  5. 2024/09/06 - 裁判所が判決を言い渡し

    裁判所は、本件記事の一部について原告の名誉毀損を認め、被告に対し275万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを命じる判決を言い渡しました。原告の謝罪広告掲載請求およびその余の請求は棄却されました。

実務上の学び

  • 公人のプライベート報道にも名誉毀損の線引きがある: 国会議員のような公人であっても、週刊誌などで報じられる私生活に関する内容が、個人の社会的評価を不当に低下させる場合、名誉毀損と判断されることがあります。報道の自由は尊重されますが、有名人だからといって何を報じても許されるわけではないことが、本件判決から示唆されます。
  • 記事全体の印象が名誉毀損の判断に影響する: 週刊誌の記事は、見出し、リード文、写真、本文など複数の要素から構成されます。裁判所は、記事中の個々の記述だけでなく、それらが全体として読者にどのような印象を与え、対象となる人物の社会的評価をどのように低下させたかを重視します。情報を受け取る際には、部分的な情報だけでなく、全体像から何が伝わるかに注目することが、名誉毀損の判断において重要視される要素の一つです。
  • 名誉毀損の賠償額は請求額と異なることが多い: 裁判で名誉毀損が認められたとしても、原告が請求した通りの高額な賠償金が必ずしも認められるわけではありません。裁判所は、被害の程度、記事の流布範囲、原告の社会的立場、被告の過失などを総合的に考慮して、具体的な賠償額を決定します。
  • 名誉回復手段としての謝罪広告は常に認められるとは限らない: 名誉毀損が認められた場合、金銭賠償に加えて謝罪広告の掲載を求めることもできますが、裁判所が謝罪広告を命じるかどうかは事案によって異なります。金銭賠償で名誉回復が十分と判断される場合や、謝罪広告を命じるまでの必要性がないと判断される場合もあります。

よくある質問

この判決が言い渡された日はいつですか?

令和6年9月6日判決言渡

本件訴訟において、原告が提起した主な請求は何ですか?

民法723条に基づく名誉回復処分として、謝罪広告の掲載を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、上記損害額合計3300万円及びこれに対する不法行為の日である令和3年12月16日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

主文において、被告は原告に対し、いくらの金員を支払うよう命じられましたか?

被告は、原告に対し、275万円及びこれに対する令和3年12月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

被告が発行した週刊誌記事のタイトルは何ですか?

「自民「大臣候補」が溺れる中国人秘書とカネ」と題する記事

本件記事のリード文にはどのような内容が記載されていましたか?

「迫り来る中国への対抗が課題の岸田政権。その足元で国会議員が2年前から中国人女性を「外交秘書」に据え、親密な関係となった。」との記載

判決文抜粋

  • 本件は、参議院議員の地位にある原告が、被告発行の週刊誌に掲載された記事により名誉を毀損されたと主張し、民法723条に基づく謝罪広告の掲載及び不法行為による損害賠償金合計3300万円の支払を求めた事案である。
  • 被告は、令和3年12月16日発行の「週刊文春」に「自民「大臣候補」が溺れる中国人秘書とカネ」と題する記事を掲載。記事には、原告が中国人女性X氏を「外交秘書」に据え、親密な関係となり、その結果「二人の関係は、円満だった家庭をも狂わせていく。」といった内容が含まれていた。
  • 原告は、本件記事が「参議院議員であり妻帯者でもある原告と同人の秘書を務める中国人女性X氏との間に男女関係が存在する」との事実を摘示し、名誉を毀損したと主張した。
  • 被告は、国家機密流出の懸念から公共性・公益目的があると主張したが、原告は、記事が私的行状に関する単なる興味本位の目的であり公共性・公益目的は認められないと主張した。
  • 被告記者は、原告が中国人女性(訴外D)と親密な関係にあるとの情報提供を受け、複数回にわたり原告と訴外Dの会食・ゴルフへの同伴等を目撃。タクシー追跡時には記者から「キスしてる!」との発言も確認された。
  • 1 被告は、原告に対し、275万円及びこれに対する令和3年12月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。2 原告のその余の請求を棄却する。

判決文PDF(出典)