リフォーム直後に娘を亡くした両親らが、網戸メーカーと施工会社に賠償を求めた訴訟
リフォームで設置されたロール網戸の操作コードで女児が窒息死した事故を巡り、製品の欠陥と施工会社の説明不足が争われました。裁判所はメーカーの製造物責任と施工会社の過失を認め、合計約5800万円の賠償を認めました。
基本情報
- 判決結果
- 原告一部勝訴
- カテゴリ
- 消費者トラブル
- 裁判所
- 大阪高等裁判所 第13民事部
- 判決日
- 2024-03-14
裁判所・判決日: 大阪高等裁判所 第13民事部 / 2024-03-14
判決結果: 原告一部勝訴
カテゴリ: 消費者トラブル
主な争点
- 製造物責任法上の「欠陥」の有無(被告YKKの責任) - 被告YKKが製造した本件ロール網戸において、幼児が操作コードに巻き込まれる危険性に対する設計上の欠陥、あるいは適切な指示・警告を欠いた欠陥があったか否か。
- リフォーム施工業者の注意義務違反(被告土屋ホームの責任) - 被告土屋ホームの従業員が、本件製品の選定、設置、および使用方法の説明において、幼児のいる居住環境に応じた安全上の注意義務を怠ったか否か。
- 特定商取引法に基づくクーリングオフの有効性と清算義務 - 法定書面の交付不備を理由とするクーリングオフの行使が有効か否か、およびそれに伴う申込金の返還義務と未払請負代金請求の可否。
- 損害と因果関係 - 損害額と賠償範囲をどこまで認めるか
裁判所の判断ロジック
- 製造物責任の認容: 幼児が首を吊る危険があるコード付き網戸の設計や警告の不備を認め、製造物責任法上の欠陥に当たると判断されました。
- 施工業者の注意義務違反: リフォーム業者が危険性を予見し、施主に対して十分な説明や安全確保の配慮を怠ったことによる過失を認めました。
- 書面不備による契約解除: 法律で義務付けられた書面の交付が不十分であったため、期間経過後でもクーリングオフが可能であると結論付けました。
時系列
- 2019/11/01 - リフォーム工事の契約と網戸の設置
第1審原告らが第1審被告土屋ホームとリフォーム契約を締結。同社は第1審被告YKKが製造した「上げ下げロール網戸XMW」を2階の窓に設置しました。
- 2019/11/10 - リフォーム後の生活開始
工事が一部を除き完成し、第1審原告家族が本件建物での生活を開始しました。
- 2019/11/18 - 網戸の操作コードによる死亡事故の発生
原告らの外出中、当時6歳の長女が網戸の昇降用コードに首が絡まった状態で発見され、亡くなるという痛ましい事故が発生しました。
- 2020/04/01 - リフォーム契約のクーリングオフ通知
事故後、第1審原告Aは法定書面が交付されていないことを理由に、本件建築申込みおよび契約のクーリングオフを通知しました。
- 2020/05/01 - 損害賠償を求める本訴の提起
原告側が、製品の欠陥(製造物責任)や施工会社の注意義務違反を主張し、損害賠償を求めて提訴。これに対し土屋ホーム側も代金支払いを求め反訴しました。
- 2022/12/01 - 第1審判決(原判決)
地裁判決に対し、原告・被告の双方が内容を不服として控訴しました。
- 2024/03/14 - 控訴審判決(大阪高等裁判所)
高裁は第1審判決を変更。YKKおよび土屋ホームに対し、連帯して高額の損害賠償金を支払うよう命じる判決を言い渡しました。
実務上の学び
- 製品の欠陥に対する製造メーカーの損害賠償責任: 製造物責任法(PL法)に基づき、製品の設計上の安全性や警告・指示の適切さが欠如していると判断される場合、メーカーは発生した重大な事故に対して損害を賠償する義務を負うことが示されている。
- 住宅工事における施工業者の説明・助言義務: リフォーム工事請負業者は、設置する製品の危険性を予見し、居住者に対して安全に使用するための説明や代替案の提示を行う注意義務があります。これらの義務を怠った場合、過失による不法行為責任を問われ得ることが、本判決によって示されました。
- 法定書面の交付不備に伴うクーリング・オフの有効性: 特定商取引法が適用される取引において、法律で定められた書面が適切に交付されない限り、クーリング・オフの行使期間は進行しない。書面不備を理由に契約解除が認められる場合があることが判決によって示されました。
よくある質問
本件事故の具体的な状況はどのようなものでしたか。
本件リフォーム工事が一部を残して完成し、第1審原告家族が本件建物での生活を開始してから間もなく、同夫妻の娘であるD(当時6歳)は、第1審原告らの外出中、本件製品に付属する本件コード(網戸の昇降をするための操作コード〔以下「コード」と「ひも」を同義で用いる。〕)が首に絡まって縊死した(本件事故)。
事故の原因となった製品の商品名は何ですか。
本件製品(商品名「上げ下げロール網戸XMW」)
第1審原告らは、第1審被告YKKに対してどのような法的根拠に基づき請求を行っていますか。
第1審被告YKKが製造した本件製品の欠陥(設計上又は指示・警告上の欠陥)...に基づき、同YKKに対しては製造物責任法3条1項に基づき、...損害賠償金及びこれに対する令和元年11月18日(本件事故日)から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めている。
第1審原告Aが主張するクーリングオフの有効性とその根拠は何ですか。
第1審原告Aは、法定書面が交付されていないからクーリングオフ行使期間は進行しておらず、本件クーリングオフは有効であると主張して、第1審被告土屋ホームに対し、特商法9条6項に基づき、本件申込金の返還...を求めている。
控訴審判決において、第1審被告らが支払いを命じられた金額はそれぞれいくらですか。
(1) 第1審被告らは、第1審原告Aに対し、連帯して2874万2422円... (2) 第1審被告らは、第1審原告Bに対し、連帯して2853万0072円... (3) 第1審被告らは、第1審原告Cに対し、連帯して110万円...
判決文抜粋
- 第1審被告らは、第1審原告Aに対し連帯して2874万2422円、第1審原告Bに対し連帯して2853万0072円、第1審原告Cに対し連帯して110万円及びこれらに対する遅延損害金を支払え。
- 夫妻の娘であるD(当時6歳)は、外出中、本件製品に付属する本件コード(網戸の昇降をするための操作コード)が首に絡まって縊死した(本件事故)。
- 本件コードは約175cmの周長を有し、本件製品が窓に設置されると、下部に垂れ下がってループを形成した。Dが本件椅子の上に立つと、ループに首が入る可能性があった。
- タグには「操作ひもがお子様の首や体に巻きつくなど、思わぬ事故の原因となりますので、ご使用には十分ご注意ください」との記載とともに、乳児のイラストがあった。
- 第1審被告YKKは、本件取扱説明書を本件製品に同梱していなかった。表紙には「この取扱説明書は施工後、お施主様に必ずお渡しください。」と記載されていた。
- 原審は、法定書面が交付されていないからクーリングオフ行使期間は進行しておらず、本件クーリングオフは有効であると判断した。