水回りの修理を依頼した住民らが、格安広告で誘い高額請求した業者らに損害賠償を求めた事件

「1000円〜」という広告を見て水回りの修理を依頼したところ、実際には数十倍から数百倍の高額な代金を請求された住民たちが、修理業者らを訴えた事案です。裁判所は業者側の組織的な違法性を認め、賠償を命じました。

基本情報

判決結果
原告一部勝訴
カテゴリ
消費者トラブル
裁判所
京都地方裁判所 第1民事部
判決日
2024-01-19

裁判所・判決日: 京都地方裁判所 第1民事部 / 2024-01-19

判決結果: 原告一部勝訴

カテゴリ: 消費者トラブル

主な争点

  • 組織的な不法行為責任の成否 - 安価な料金をウェブサイトで表示して顧客を誘引し、実際には事前の明確な合意なく高額な工事を行い代金を請求する一連の行為(いわゆるレスキュー商法)が、共同不法行為に該当するか。
  • ウェブサイト上の「運営責任者」の賠償責任の範囲 - ウェブサイトの「会社概要」等に運営責任者として氏名が表示されていた者が、事業の実態に関与していたとして賠償責任を負うべきか。特に時期によって表記が異なる場合の責任の所在が争われた。
  • 特定商取引法に基づくクーリング・オフ適用の可否 - 原告らが自ら電話で修理を依頼した場合であっても、当初の依頼内容を逸脱した不意打ち的な勧誘によって高額な工事契約を締結させられた場合に、特定商取引法の「訪問販売」としてクーリング・オフが認められるか。

裁判所の判断ロジック

  • 広告表示の不当性: ウェブサイト上で「1000円から」等の極めて低廉な価格を強調して顧客を誘引し、実際には高額な代金を請求する手法は、消費者の合理的な選択を妨げる不当な勧誘行為であると認定されました。
  • 強引な契約締結の否定: 明確な見積りや合意がないままに作業を開始し、断りにくい状況で高額な契約を強いる行為は、不法行為を構成するものであり、業者は損害賠償の責任を免れないと判断されました。
  • 運営者の連帯責任: 実際に訪問した作業員だけでなく、虚偽の表示等を含む集客システムを構築・運営していた管理責任者らについても、組織的に不当な利得を得ていたとして連帯して賠償義務を負うべきとされました。

時系列

  1. 2020/10/23 - ウェブサイト「水のトラブル緊急駆付隊」の運営体制

    被告Cが運営するウェブサイトにおいて、運営責任者として被告Gの名前が記載されていた時期。サイト上では「税込1000円〜」「見積り無料」などの安価な広告が表示されていた。

  2. 2021/03/10 - ウェブサイトの運営責任者変更(被告A)

    本件ウェブサイトの会社概要欄において、運営責任者が被告Aに変更された。この間も継続して「基本料金1000円〜」などの格安な料金設定を強調して集客を行っていた。

  3. 2021/04/22 - ウェブサイトの運営責任者変更(被告B)

    運営責任者がさらに被告Bへと変更された。原告らはこうしたサイトの表示を信じて、自宅の水回りトラブルの修理を依頼することになる。

  4. 判決文記載の各契約日 - 修理業者の訪問および高額な工事請負契約の締結

    派遣された修理業者(被告D、E、F)が、明確な合意がないまま修理を行い、その後に原告らに対して相場より高額な代金の支払いを求める契約を締結させた。

  5. 2021/08/26 - 損害賠償の起算日(遅延損害金の発生)

    不法行為またはクーリング・オフに伴う返還義務について、利息・遅延損害金の計算が開始される基準日となった日。

  6. 判決日(不明) - 判決:不法行為に基づく損害賠償請求の認容

    裁判所は、過大な代金受領を目的とした被告らの行為を不法行為と認め、被告A〜Fに対して連帯して損害賠償(認容額)を支払うよう命じた。一方、被告Gに対する請求は棄却された。

実務上の学び

  • 広告表示と実際の請求額の乖離に関する注意点: ウェブサイト上で「1,000円〜」や「見積り無料」と低廉な価格が強調されていても、実際の現場で数万円から数十万円の高額な請求がなされる事例があります。広告上の表示価格と実際の請求額に著しい乖離がある場合、不法行為と認定される重要な要素となります。
  • 明確な合意なき工事着手とその法的評価: 修理の内容や具体的な金額について、依頼者との間で明確な合意が形成されないまま作業を開始し、事後に高額な契約を締結させる手法は、不当な代金取得を目的とした不法行為とみなされる可能性があります。
  • ウェブサイト運営責任者等の法的責任: 実際に現場で作業を行った作業員だけでなく、ウェブサイト上に「運営責任者」として名前が記載されている者や、サイトの経営主も、組織的な不法行為の一部として連帯して損害賠償義務を負うことが示されています。
  • 特定商取引法に基づくクーリング・オフの行使: 自ら業者を呼んだ場合であっても、広告と異なる内容の勧誘が行われたり、消費者が予期せぬ高額な契約を締結させられたりした状況下では、特定商取引法におけるクーリング・オフ規定の適用対象となる場合があります。

よくある質問

原告らは、どのような経緯で修理業者の派遣を依頼しましたか?

自宅で発生したトイレ等の水回りのトラブルについて、被告Cが運営するウェブサイト「水のトラブル緊急駆付隊」(以下「本件ウェブサイト」という。)に記載された電話番号に電話をかけて、修理業者の派遣を依頼した。

本件ウェブサイト上では、費用や見積りについてどのような表示がされていましたか?

「安心の価格設定!作業に入る前に必ずお見積りをお出ししています。出張、調査、お見積りまでは完全無料なのでご安心ください。」「基本料金税込1000円~+部品代+作業費」

原告らが主位的に主張した、不法行為に基づく損害賠償請求の理由はどのようなものですか?

被告らは、過大な工事代金の支払を受けることを目的として、明確な合意をしないままに修理工事を実施し、その後に原告らに工事請負契約を締結させて高額な代金を支払わせたと主張

予備的請求において、原告らが主張した契約解除の法的根拠は何ですか?

クーリングオフにより上記工事請負契約を解除したと主張して、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)9条6項に基づき、各原告が工事代金として支払済みの別紙1「支払額」欄記載の各金員及び各金員に対する代金受領日の後の日である令和3年8月26日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による利息の連帯支払を請求

本件判決における、被告Gに対する請求の判断はどのようになりましたか?

原告らの被告Gに対する主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。

判決文抜粋

  • 被告A、被告B、被告C、被告D、被告E及び被告Fは、原告らに対し、連帯して、認容額記載の各金額及びこれに対する遅延損害金を支払え。
  • 原告らは、自宅の水回りのトラブルについて、ウェブサイト「水のトラブル緊急駆付隊」を見て修理を依頼。訪問した作業員と高額な工事請負契約を締結させられたとして、不法行為に基づく損害賠償等を請求した事案である。
  • サイトには「税込1000円~」「出張、調査、お見積りまでは完全無料」と表示されていた。原告らは、実際には高額請求を目的としながら、安価に修理可能であるかのように誤認させて顧客を誘引したと主張している。
  • 被告らは、費用について十分な説明をせず、明確な合意がないまま作業の一部を実施。契約しなければ費用を請求すると申し向けて断れない状況を作り、「火災保険がおりる」等の虚偽の事実を伝えて契約を締結させたとされる。
  • サイト運営者が顧客を割り当て、作業員が契約を締結。作業員は契約金額の60~70%を「広告費」として運営者に支払う仕組みとなっており、一連一体となって組織的に活動していた。
  • 全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)には、被告らに対して「サイト上の表示とは異なる高額な代金を請求された」という苦情相談が多数記録されていることが認められた。

判決文PDF(出典)