「自作を模倣された」と主張する創作者が、羽田空港の展示物撤去等を求めた訴訟
自身の作品を模倣して制作された展示物が羽田空港に展示されているとして、創作者が制作担当者と空港運営会社を訴えた事案です。裁判所は、展示物が著作権侵害(複製や改作)に該当しないと判断し、原告の請求を認めませんでした。
基本情報
- 判決結果
- 原告敗訴
- カテゴリ
- 著作権・AI
- 判決日
- 2023-12-25
裁判所・判決日: 2023-12-25
判決結果: 原告敗訴
カテゴリ: 著作権・AI
主な争点
- 著作権(複製権・翻案権)侵害の存否 - 被控訴人Yが制作した本件各展示物が、控訴人の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるものか、すなわち複製または翻案にあたるか否か。
- 著作者人格権(氏名表示権)侵害の存否 - 本件各展示物の譲渡や展示に際し、控訴人の氏名を表示しなかったことが著作者人格権の侵害(氏名表示権侵害)を構成するか否か。
- 展示の差止めおよび廃棄請求の当否 - 被控訴人らによる展示行為に対し、著作権法112条に基づく展示の差止めや展示物の廃棄請求が認められるか否か。
- 共同不法行為に基づく損害賠償責任の有無 - 被控訴人らが共同して著作権および著作者人格権を侵害したとして、不法行為に基づく損害賠償および謝罪広告の掲載義務を負うか否か。
裁判所の判断ロジック
- 創作的表現の同一性: 著作権法が保護するのは具体的な「表現」であり、単なる「アイデア」や「ありふれた手法」が似ているだけでは侵害にならないという、創作の自由を守る原則が適用されました。
- 氏名表示義務の否定: 展示物が原告の著作物を複製または翻案したものとは認められない以上、その作品に原告の氏名を表示する義務はなく、著作者人格権の侵害も成立しないと判断されました。
- 施設運営者の適法性: 作品を展示・管理する空港ビル側についても、展示物自体が著作権を侵害していない以上、その展示行為が不法行為を構成することはないという適正な判断が維持されました。
時系列
- 2010/11/01 - 作品の制作および譲渡(不法行為の起算点)
被控訴人Yが控訴人の著作物を複製・翻案したとされる展示物を制作し、空港運営会社(日本空港ビルデング等)へ譲渡したとされる時期。損害賠償請求の遅延損害金の起算日となっています。
- 2018/12 - 第1審の提訴(東京地方裁判所)
控訴人が被控訴人らに対し、著作権および著作者人格権の侵害を理由として、展示の差し止めや廃棄、損害賠償等を求めて提訴しました。
- 2019/06/24 - 羽田空港第1ターミナル展示物に関する賠償起算日
日本空港ビルデングが運営する羽田空港第1旅客ターミナル内の展示物(15〜20)について、控訴人が主張する損害金の発生起算日です。
- 2020/07/22 - 羽田空港第3ターミナル展示物に関する賠償起算日
東京国際空港ターミナルが運営する羽田空港第3旅客ターミナル内の展示物(1〜14)について、控訴人が主張する損害金の発生起算日です。
- 2023/09/13 - 控訴審の口頭弁論終結
知的財産高等裁判所(控訴審)において、両当事者の主張と立証が完了し、審理が締めくくられました。
- 2023/12/25 - 控訴審判決(控訴棄却)
裁判所は、控訴人の請求を退けた原審(第1審)の判断を維持し、本件控訴を棄却しました。控訴人側の主張は認められない結果となりました。
実務上の学び
- 著作権侵害の主張における立証の必要性: 著作物の複製や翻案を理由に損害賠償を請求する場合、相手方の制作物が自身の創作的な表現に依拠して作成されたことを、客観的事実に基づき証明することの要否が争点となる。
- 施設運営者に対する差止請求と廃棄請求の範囲: 著作権侵害が疑われる展示物について、その制作者だけでなく、実際に展示を行っている施設運営主体に対しても、展示の差止めや物件の廃棄を求める法的措置が並行して提起される事例が存在する。
- 著作者人格権と氏名表示の法的保護: 作品の公表に際して著作者の氏名を表示する権利は著作者人格権(氏名表示権)として保護されており、権利侵害が認められた場合には、損害賠償に加えて謝罪広告等の名誉回復措置が請求の対象となり得る。