自身のTwitter投稿を無断でスクリーンショットされた原告が、発信者の特定を求めた事例

Twitterに投稿した文章やダイエットの経過写真が、第三者によってスクリーンショットの形で無断転載された事件です。原告は著作権侵害を理由に、投稿者の特定に必要な情報の開示を求め、裁判所はその請求を全面的に認めました。

基本情報

判決結果
原告勝訴
カテゴリ
SNS・ネット
裁判所
東京地方裁判所
判決日
2021-11-25

裁判所・判決日: 東京地方裁判所 / 2021-11-25

判決結果: 原告勝訴

カテゴリ: SNS・ネット

主な争点

  • 原告投稿記事の著作物性 - 原告がツイッターに投稿した、新型コロナウイルスへの対応を批判する文章や、ダイエットに関する文章および自身の写真は、思想または感情を創作的に表現した「著作物」に該当するか。
  • 権利侵害の明白性(複製権・公衆送信権の侵害) - 氏名不詳者が原告の投稿画面のスクリーンショットをツイッターに再投稿した行為が、原告の著作権(複製権および公衆送信権)を侵害していることが明らかであるか。
  • ログイン情報の「権利の侵害に係る発信者情報」該当性 - 本件各投稿の送信時ではなく、アカウントへのログイン時に割り当てられたIPアドレス等の情報(本件ログイン情報)が、プロバイダ責任制限法4条1項に規定される「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか。
  • 発信者情報開示請求の要件充足性 - 被告(プロバイダ)が保有する本件ログインに関する情報が、権利侵害を行った発信者の特定に必要な情報として開示の対象に含まれるか。

裁判所の判断ロジック

  • 投稿の著作物性: 大阪府のコロナ対策に関する独自の文章や、自身の体型の変化を撮影した写真は、投稿者の思想や感情が創作的に表現された「著作物」にあたると判断されました。
  • 無断転載の違法性: 他人の投稿画面をスクリーンショットし、許可なくSNSに再投稿する行為は、著作権(複製権および公衆送信権)を侵害するものであると認められました。
  • 開示請求の妥当性: 著作権侵害が明らかであり、被害者が損害賠償請求などを行うための正当な理由があるとして、プロバイダに対して発信者情報の開示が命じられました。

時系列

  1. 2021/01/17 - 原告による新型コロナウイルス関連の記事投稿

    原告がTwitterに、大阪府の新型コロナウイルス対応を批判する内容の文章(原告投稿記事1)を投稿しました。

  2. 2021/01/25 - 原告によるダイエット関連の記事と写真の投稿

    原告がTwitterに、自身の体重変化に関する文章と、上半身を撮影した3枚の写真(原告投稿記事2)を投稿しました。

  3. 2021/01/17 - 2021/01/30 - 氏名不詳者によるスクリーンショットの無断投稿

    氏名不詳者が、原告の投稿画面をスクリーンショットした画像を添付し、計7回にわたってTwitterに投稿(本件各投稿)を行いました。

  4. 2021/02/08 - 氏名不詳者によるTwitterアカウントへのログイン

    氏名不詳者が、特定のIPアドレスを用いて本件アカウントにログインしました。この際の通信記録が、後の発信者特定の手がかりとなります。

  5. 2021/03/17 - Twitter社によるログイン情報の開示

    コンテンツプロバイダであるTwitter社が、原告に対し、本件ログインに使用されたIPアドレスと日時の情報を開示しました。

  6. 2021/11/25 - 判決:プロバイダに対し発信者情報の開示を命令

    裁判所は、氏名不詳者による投稿が原告の著作権(複製権・公衆送信権)を侵害したと認め、経由プロバイダである被告に対し、契約者情報の開示を命じました。

実務上の学び

  • スクリーンショットによる再投稿と著作権侵害: 他者のSNS投稿をスクリーンショットして無断で再投稿する行為は、元の投稿が著作物と認められる場合、著作権(複製権および公衆送信権)の侵害に該当する可能性がある。
  • プロバイダ責任制限法に基づく開示手続: 著作権侵害が明白であると認められる事案において、被害者はプロバイダ責任制限法に基づき、投稿者を特定するための発信者情報の開示を請求することが認められている。
  • SNS上の文章や写真の法的保護: 個人の意見を述べた文章や自ら撮影した写真が含まれるSNSの投稿は、思想または感情を創作的に表現したものとして、著作権法上の保護対象となる場合がある。
  • ログイン時の通信記録による発信者特定: SNSへのログインに使用されたIPアドレス等の通信記録から、アクセスプロバイダが保有する契約者情報を特定し、裁判所を通じてその開示が命じられる事例が存在する。

よくある質問

本件において原告が被告に対し、発信者情報の開示を求める法律上の根拠は何ですか?

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の氏名や住所等の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める

原告は、どのような権利が侵害されたと主張していますか?

原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかである

原告投稿記事2にはどのような内容が含まれていましたか?

ダイエットによる原告の体重の変化等を記載した文章と,上半身の衣服を脱いだ原告の腰から上の部分を原告の右側から撮影した3枚の写真(以下「本件各写真」という。)を掲載した同目録2記載の記事(以下「原告投稿記事2」という。)を投稿した。

被告である株式会社NTTドコモは、どのような立場として本件に関わっていますか?

被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,本件発信者情報を保有している。

裁判所が言い渡した主文の内容を教えてください。

1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。

判決文抜粋

  • 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。訴訟費用は被告の負担とする。
  • 本件は,原告が,ツイッターに投稿した自身の著作物である文章や写真がスクリーンショットにより無断で投稿され著作権が侵害されたと主張して、プロバイダに対し発信者情報の開示を求めた事案である。
  • 原告投稿記事の文章は独自の文章構成や表現を用いて作成され、写真は撮影対象や構図等について独自の工夫がされたものである。これらは原告の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たる。
  • 本件投稿は、原告の記事の内容を揶揄したものにすぎない。批評等のために正当な範囲内で行われたものと認めることはできず、適法な引用には当たらないため、著作権(公衆送信権)の侵害が認められる。
  • 侵害情報の発信そのものだけでなく、発信に関連して把握され、発信者と同一人物によるものと認められる電気通信に係る情報も「権利の侵害に係る発信者情報」に当たり得る。
  • 氏名や住所が開示されただけで確実に権利行使が可能になるとまでは当然にいえず、損害賠償請求等のために電子メールアドレス及び電話番号の開示を受けるべき正当な理由がある。

判決文PDF(出典)