SODクリエイト株式会社が、自社動画を無断で販売した投稿者の情報開示を求めた事例
アダルトビデオの制作販売を行う会社が、自社の動画作品を米国法人の運営する販売サイトに無断で投稿した人物を特定するため、日本のインターネット接続業者(プロバイダ)に対して契約者情報の開示を求めました。裁判所は、著作権侵害の事実を認め、プロバイダに対して情報の開示を命じました。
基本情報
- 判決結果
- 原告勝訴
- カテゴリ
- 著作権・AI
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 判決日
- 2021-02-25
裁判所・判決日: 東京地方裁判所 / 2021-02-25
判決結果: 原告勝訴
カテゴリ: 著作権・AI
主な争点
- 著作権の帰属 - 原告が、本件各著作物(アダルトビデオ)について、制作会社からの権利譲渡等を通じて有効に著作権を保有しているか。
- 権利侵害の明白性 - プロバイダ責任制限法5条1項1号に規定される「権利が侵害されたことが明らかであるとき」という要件を満たしているか。
- 発信者情報の開示を求める正当な理由 - プロバイダ責任制限法に基づき、原告が損害賠償請求権の行使等のために発信者情報の開示を受ける正当な理由があるか。
裁判所の判断ロジック
- 著作権侵害の認定: 原告が著作権を有する動画が、権利者に無断でインターネット上にアップロードされ、不特定多数が閲覧可能な状態に置かれたことで、著作権(公衆送信権等)の侵害が認められました。
- 開示請求の正当性: 権利侵害が明らかであり、発信者に対して損害賠償請求を行うためには情報の特定が必要不可欠であることから、プロバイダ責任制限法上の「正当な理由」があると判断されました。
- プロバイダの義務: 被告が通信を媒介した経由プロバイダであり、発信者情報を保有していることが認められたため、法律に基づき、対象となる情報を開示する義務があると結論付けられました。
時系列
- 2011/01/01 - 映像制作業務委託契約の締結
原告(SODクリエイト)と制作会社(A社)の間で、アダルトビデオの制作を目的とした業務委託契約が締結され、制作会社により著作物が制作された。
- 2011/12/31 - 著作権の譲渡と自社商品の販売開始
原告が制作会社から著作権の譲渡を受け、動画にモザイク処理等の編集を施した上で、自社パッケージ商品として販売を開始した。
- 2020/01/01 - FC2サイトへの無断アップロードの発生
氏名不詳の投稿者が、被告(ソフトバンク)の通信サービスを経由し、原告の動画を無断で「FC2コンテンツマーケット」へ投稿。有料で閲覧・購入可能な状態に置いた。
- 2020/08/01 - 発信者情報開示請求訴訟の提起
投稿者の身元を特定するため、原告がプロバイダ責任制限法に基づき、経由プロバイダである被告に対して発信者情報の開示を求めて提訴した。
- 2020/12/22 - 口頭弁論の終結
裁判所において当事者双方の主張および証拠の提出が完了し、審理が締め切られた。
- 2021/02/25 - 判決の言い渡し
東京地方裁判所は、投稿者による著作権侵害を認め、被告に対し原告へ発信者情報を開示するよう命じる判決を下した。
実務上の学び
- 無断アップロードによる著作権侵害の成立: 著作権者の許諾を得ずに動画等の著作物をインターネット上にアップロードし、第三者が閲覧・購入可能な状態にする行為は、著作権(複製権および送信可能化権)の侵害に該当し、法的責任の追及対象となる。
- プロバイダに対する発信者情報の開示請求: 著作権侵害が行われた場合、被害者は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」に基づき、経由プロバイダに対して投稿者の氏名や住所といった情報の開示を求めることが可能である。
- 海外プラットフォーム利用時の国内法適用: 海外法人が運営するコンテンツ販売サイトを利用した投稿であっても、日本の通信事業者の回線を経由してアップロードが行われた場合には、日本の裁判所を通じてプロバイダに対する開示命令が発せられる。
- 開示請求における著作権者立証の必要性: 発信者情報の開示を求めるにあたっては、業務委託契約や著作権譲渡の事実など、請求者が正当な著作権を有していることを客観的な証拠に基づいて証明する必要がある。
よくある質問
本件訴訟において、原告が被告に対して求めている内容は何ですか。
被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める
原告が主張する、著作権侵害の具体的な態様について教えてください。
氏名不詳者は,原告に無断で,原告が著作権を有する別紙著作物目録記載の各著作物(以下「本件各著作物」という。)に依拠して,その一部と同一の内容の別紙被害動画目録記載の各動画(以下「本件各動画」という。)を再製した上,被告を経由プロバイダとして,米国法人であるFC2,INC.(以下「FC2」という。)の開設・運営する「FC2コンテンツマーケット」(以下「本件サイト」という。)に本件各動画を投稿し,一般閲覧者が有料で購入(受信)可能な状態に置き,原告の著作権(複製権又は送信可能化権)を侵害した
被告の「開示関係役務提供者」としての該当性および情報の保有について、どのように認定されていますか。
被告は,法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当し,本件発信者情報を保有している。
原告は本件各著作物の著作権をどのように取得したと主張していますか。
原告は,A社から本件各著作物の納品及びこれに係る著作権の譲渡を受け,これにモザイク処理を施した上で,その複製物であるアダルトビデオ商品(甲19~21)の販売を行っており,同商品のパッケージ等には,原告が著作者として表示されている。
本件の主文の内容を教えてください。
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。
判決文抜粋
- 原告が、氏名不詳者により原告の著作物を無断で「FC2コンテンツマーケット」に投稿・販売され、著作権(送信可能化権等)を侵害されたと主張して、プロバイダである被告に対し発信者情報の開示を求めた事案である。
- 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報(氏名又は名称、住所、電子メールアドレス)を開示せよ。訴訟費用は被告の負担とする。
- 制作会社が本件著作物の著作者であり、原告は同社との業務委託契約に基づき、著作権の譲渡を受け、これを取得したものと認めるのが相当である。
- 氏名不詳者による動画のアップロード及び販売行為によって、少なくとも本件各著作物に係る送信可能化権を侵害されたことが明らかであるというべきである。
- 転居等の事情によって実際の住所が被告の保有する情報と異なる可能性もあるから、発信者特定に資する情報として電子メールアドレスの開示が不要であるとはいえない。
- 原告は、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告に対し、本件発信者情報の開示を求めることができる。よって、原告の請求は理由があるからこれを認容する。