適格消費者団体が『モバゲー』の不当条項使用差止めを求めた事件

適格消費者団体がソーシャルゲーム運営会社に対し、利用規約中の「事前通知なしの利用停止・アカウント削除」や「有料コインの失効・不返還」条項が消費者契約法に反するとして差止めを求めた裁判です。裁判所は、事業者に一方的なアカウント停止・削除裁量を認める条項等の効力を制限・差止め判断を示しました。

基本情報

判決結果
原告一部勝訴
カテゴリ
消費者トラブル
裁判所
東京高等裁判所
判決日
2020-11-05

裁判所・判決日: 東京高等裁判所 / 2020-11-05

判決結果: 原告一部勝訴

カテゴリ: 消費者トラブル

主な争点

  • 別紙契約条項目録記載1の条項の不当条項該当性 - モバゲーの利用規約のうち、別紙契約条項目録記載1の条項が、消費者の利益を一方的に害するものとして消費者契約法8条1項の不当条項に該当するか否か。
  • 別紙契約条項目録記載2の条項の不当条項該当性 - モバゲーの利用規約のうち、別紙契約条項目録記載2の条項が、消費者契約法8条1項の不当条項に該当するか否か。
  • 規約改正(合理的判断文言の追加等)が不当条項該当性に与える影響 - 原審後に控訴人が規約を改正し、サービス利用制限等の事由について「当社が合理的に判断した場合」との文言を追加したことが、消費者契約法8条1項の不当条項該当性の判断に影響を与えるか否か。

裁判所の判断ロジック

  • 免責条項の不当性: 事業者がサービスの利用制限等に際し、受領した料金を一切返還しないとする条項は、消費者の利益を一方的に害するため不当条項に該当する。
  • 合理的判断の限定性: 事業者の判断による条項であっても、「合理的に判断した場合」という限定が付されていれば、恣意的な運用を防ぐことができるため不当条項には該当しない。
  • 規約改正による是正: 事業者が訴訟の過程で規約を改正し、判断に「合理的に」という限定を加えたことは、不当な条項運用のリスクを低下させる是正として評価される。

時系列

  1. 不明 - 「モバゲー」利用規約における不当条項の使用

    控訴人(被告)が運営するポータルサイト「モバゲー」のサービス提供契約において、消費者契約法上不当な条項を含む規約が使用されていた。

  2. 2016/08/26 - 適格消費者団体からの差止請求等の通知

    被控訴人(原告、適格消費者団体)が、不当条項の使用差止等を求める通知を控訴人に対して行った。

  3. 不明 - 原審への提訴

    被控訴人が消費者契約法に基づき、不当条項を含む契約の申込み又は承諾の差止め等を求めて訴訟を提起した。

  4. 2020/02/05 - 原審判決(一部認容、一部棄却)

    原審は、別紙目録1の条項に関する請求を全部認容し、目録2の条項に関する請求を全部棄却する判決を言い渡した。

  5. 2020/02/14 - 控訴人による控訴提起

    控訴人は、原判決の認容部分(目録1の条項)を不服として本件控訴を提起した。

  6. 2020/03/17 - 本件規約の一部改正

    控訴人は、本件規約の一部条項を改正し、サービス利用制限等の条件に「合理的に判断した場合」などの文言を追加した。

  7. 2020/06/16 - 被控訴人による附帯控訴提起

    被控訴人は、原判決の棄却部分(目録2の条項)を不服として本件附帯控訴を提起した。

実務上の学び

  • 一方的な「料金返還なし」条項は無効になる可能性がある: オンラインサービスなどで、利用者に落ち度があった場合でも「すでに支払った料金は一切返還しない」とする条項は、消費者に著しく不利な不当条項として無効とされることがあります。事業者が一方的に定めた免責条項であっても、通用しない場合があります。
  • 事業者の裁量には「合理的な判断」の根拠が必要: 利用規約に「当社が判断した場合」とだけ書かれていると、事業者の恣意的な運用が懸念されます。しかし、「合理的に判断した場合」のように客観的な基準を満たすことを条件とすれば、有効と判断されることがあります。規約を読む際は、事業者側の判断に客観的な制限が設けられているかどうかがポイントとなります。
  • 不当な規約は適格消費者団体が差し止められる: 消費者契約法に違反する不当条項が使われている場合、認定を受けた適格消費者団体が事業者に対してその条項の使用を差し止めることができます。個人の力だけでなく、団体を通じて不当な条項の使用を未然に防ぐ仕組みがあります。
  • 利用規約は改定されるため、変更内容に注意を払う: 本件でも、裁判の過程で事業者が規約の文言を修正しています(「判断した」を「合理的に判断した」に変更など)。利用規約は事業者によって一方的に改定されることがあるため、契約を継続する上で、特に免責や利用停止に関する条項に重要な変更がないか確認することが重要です。

よくある質問

被控訴人は、どのような法令に基づいて、控訴人に対し不当条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行わないよう求めたか。

法8条1項の不当条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を現に行い,又は行うおそれがあると主張し,法12条3項に基づいて

原審は、原判決別紙契約条項目録記載1及び2の契約条項に係る被控訴人の請求について、それぞれどのような判決を言い渡したか。

①原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請求を全部認容し,②同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求を全部棄却する旨の判決を言い渡した

控訴人が令和2年3月17日に改正した本件規約の7条1項c号及びe号には、どのような内容が定められているか。

c 他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が合理的に判断した場合 e その他,モバゲー会員として不適切であると当社が合理的に判断した場合

当裁判所は、原判決別紙契約条項目録記載1及び2の契約条項に係る被控訴人の請求について、それぞれどのように判断したか。

原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請求は全部理由があり,同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求は全部理由がないものと判断する

関連する論点

判決文抜粋

  • 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
  • 適格消費者団体が、モバゲーを運営する会社に対し、不当条項を含む消費者契約の申込み等を差し止める事案である。
  • 控訴人は、原判決後に、規約中の「当社が判断した場合」という文言を「当社が合理的に判断した場合」に改正した。
  • 「合理的な判断」としても、客観的に合理性がない措置を行う可能性が十分にあり得る上、会員が事後的にそれが合理的でないか否かを判断することは著しく困難である。
  • 「一切損害を賠償しません」と例外を認めていない条項は、損害賠償責任を負わないことを確認的に規定したものと解することは困難である。
  • 事業者を救済する方向で消費者契約の条項に文言を補い限定解釈をすることは、消費者契約の内容を明確にすべき法の趣旨に照らし、極力控えるのが相当である。

判決文PDF(出典)