通販会社「北の達人」が、虚偽の比較記事を書いた投稿者の特定を求めた裁判
自社の美容液と他社製品を比較し、事実と異なる高額な価格設定などを掲載したウェブサイトの投稿者を特定するため、サーバー運営会社に対して情報の開示を認めた事例です。
基本情報
- 判決結果
- 原告勝訴
- カテゴリ
- SNS・ネット
- 裁判所
- 大阪地方裁判所
- 判決日
- 2020-11-10
裁判所・判決日: 大阪地方裁判所 / 2020-11-10
判決結果: 原告勝訴
カテゴリ: SNS・ネット
主な争点
- 信用毀損行為(不正競争防止法2条1項21号)の成否 - 本件ウェブページにおいて、原告商品の価格等が虚偽の内容で記載され、競業関係にある原告の営業上の信用を害する「虚偽の事実の流布」に該当するか否か。
- 品質等誤認表示(不正競争防止法2条1項20号)の成否 - 本件各記載が、原告の競業者が販売する商品の品質、規格、その他の内容について、一般消費者に誤認させるような表示に該当するか否か。
- 一般不法行為(民法709条)の成否 - 本件各記載が原告の社会的評価を低下させる名誉毀損、または信用を毀損する行為として、不法行為に基づく損害賠償責任を発生させる権利侵害にあたるか否か。
- 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無 - 原告が本件発信者に対して損害賠償請求等の法的措置を講じるために、被告が保有する発信者情報の開示を受ける正当な理由があるか否か。
裁判所の判断ロジック
- サイトの宣伝目的: 対象のウェブページが単なる個人の感想(口コミ)ではなく、特定の商品を宣伝する目的で制作された比較広告の一環であると判断されました。
- 価格表示の虚偽性: 原告商品の価格を実際よりも高く記載するなど、客観的な事実に反する情報を掲載し、競合商品より高額であるとの誤った印象を消費者に与えた点が重視されました。
- 営業上の信用毀損: 虚偽の事実を流布して競合他社の営業上の信用を害する行為は、不正競争防止法上の信用毀損行為に該当し、権利侵害の明白性が認められると結論付けました。
時系列
- 2019/10 - ウェブサイトへの比較情報の掲載
氏名不詳の発信者が、被告の管理するサーバー上のウェブサイトに、原告の商品と他社商品の価格等を比較する情報を掲載しました。
- 2019/10 - 虚偽の事実による信用毀損の発生
掲載された比較情報が、実際とは異なる価格設定を記載するなど、原告商品の信用を害する虚偽の内容を含んでいたことが問題となりました。
- 2020/01 - 発信者情報開示請求訴訟の提起
原告は、不正競争防止法違反(信用毀損等)や名誉毀損に当たるとして、プロバイダ責任制限法に基づき、投稿者の情報の開示を求める訴えを提起しました。
- 2020/09/24 - 口頭弁論の終結
裁判所における当事者双方の主張および証拠の提出が完了し、審理が締め切られました。
- 2020/11/10 - 判決の言渡し
東京地方裁判所は、投稿内容が虚偽の事実の流布に該当し、権利侵害の明白性があると認め、被告に対して情報の開示を命じる判決を言い渡しました。
実務上の学び
- 比較広告における客観的事実の重要性: 他社商品と比較する形式のウェブページにおいて、価格や解約条件といった消費者の選択を左右する重要な事実を誤って記載し、競合他社の営業上の信用を害する行為は、不正競争防止法上の信用毀損行為に該当し得る。
- インターネット上の投稿に対する開示請求の法的根拠: 氏名不詳者による投稿であっても、その内容が他者の権利を明白に侵害していると判断される場合、プロバイダ責任制限法に基づき、サーバー管理者等に対して発信者の氏名や住所といった情報の開示を求めることが可能である。
- 宣伝目的のサイトにおける情報の真実性: 単なる個人の感想(口コミ)ではなく、特定の商品を宣伝・推奨する目的で制作された比較サイト等において、虚偽の情報を流布して他社製品を不当に貶める行為は、一般不法行為としての名誉毀損にも当たり得る。
よくある質問
この裁判の主文(結論)はどのような内容ですか?
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。
原告が発信者情報の開示を求める法的根拠として挙げている法律は何ですか?
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項
原告はどのような事業を行い、どのような商品を販売していますか?
原告は,インターネット・テレビ等を利用した通信販売事業等を目的とする株式会社であり,「アイキララ」という名称の美容クリーム(以下「原告商品」という。)を販売している。
本件における主な争点は何ですか?
⑴ 権利侵害の明白性 ア 信用毀損行為(不正競争防止法2条1項21号)の成否 イ 品質等誤認表示(不正競争防止法2条1項20号)の成否 ウ 不法行為責任(民法709条)の成否 ⑵ 開示を受けるべき正当な理由
原告は、本件記載1における商品の価格表示について、どのような点が虚偽であると主張していますか?
真実は,原告商品の「年間購入コース」の価格が1個当たり2384円(税別。以下同じ。2巡目の初回に2500円割引。),単品価格が2980円であり,第三者商品の「お得定期コース」の価格が1個当たり2327円,単品価格が3300円であるにもかかわらず,本件記載1において,原告商品の「年間購入コース」の価格が2533円,単品価格は原告商品も第三者商品も同じ2980円であるとの虚偽の事実を記載した
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判決文抜粋
- 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。訴訟費用は被告の負担とする。
- 原告が,氏名不詳者によりウェブページに掲載された記載は,競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり,また,名誉毀損行為として一般不法行為に当たると主張して,サーバーの管理者である被告に対し,発信者情報の開示を求める事案である。
- 本件各記載が、不正競争防止法2条1項21号(信用毀損行為)、同項20号(品質等誤認表示)、および民法709条(不法行為責任)のいずれかに該当し、原告の権利を侵害したといえるかどうかが争点となった。
- 本件発信者は、原告商品が第三者商品よりも高額であるとの虚偽の事実を記載した上で、ことさらに原告商品が粗悪で需要者からの支持がない商品であるかのような負の印象を与える記載をし、原告の営業上の信用又は社会的評価を害した。
- 情報サイトにおける多様な意見の存在が,消費者に対する情報提供に重要な役割を果たしていることからすれば,特定の商品に対する否定的な意見の公表は,誹謗中傷にわたらない限り,原則として是認されるべきである。
- 本件ウェブページは,通販でアイクリームを購入しようとする需要者に対し,原告商品と第三者商品を比較対照する情報を提供しようとするものである。ページの最終部分には,第三者商品を購入することができる公式ウェブサイトへのリンク(アフィリエイト等のボタン)が貼られている。