アパートの大家が「法定更新」を主張する入居者に対し、契約更新料の支払いを求めた事例
大家が、法定更新を理由に更新料の支払いを拒む入居者に対し、契約に基づく支払いを求めた事案です。裁判所は、特約の有効性を認め、法定更新であっても更新料の支払義務は免れないと結論付けました。
基本情報
- 判決結果
- 原告勝訴
- カテゴリ
- 不動産トラブル
- 裁判所
- 東京簡易裁判所
- 判決日
- 2005-03-11
裁判所・判決日: 東京簡易裁判所 / 2005-03-11
判決結果: 原告勝訴
カテゴリ: 不動産トラブル
主な争点
- 更新料支払特約の有効性(借地借家法第30条との抵触) - 本件賃貸借契約における更新料の支払特約が、賃借人に不利な特約を禁止する借地借家法第30条の規定に抵触し、無効となるか否か。
- 法定更新時における更新料支払義務の有無 - 契約が合意更新ではなく法定更新(法律の規定に基づき自動的に更新されること)となった場合に、契約上の更新料支払義務が認められるか否か。
裁判所の判断ロジック
- 更新料特約の有効性: 賃料の1か月分を更新料とする特約は、借地借家法30条によって無効とされるほど賃借人にとって著しく不利益なものとは認められない。
- 法定更新への適用: 更新料の支払義務をあらかじめ特約で合意した当事者の意思は重視されるべきであり、法定更新の場合であっても特約は有効に適用される。
- 更新意思の認定: 借主側が一度は契約更新のために印鑑登録証明書を提出するなど、更新の意思を表明していた事情を考慮すれば、特約の履行を求めるのが相当である。
時系列
- 2002/07/08 - 賃貸借契約の締結
原告(貸主)と被告(借主・連帯保証人)の間で、東京都新宿区の物件について、期間2年、賃料9万2000円、更新料を賃料1か月分とする内容の契約が結ばれました。
- 2004/05/26 - 更新意思の表明と書類の送付
賃貸借期間の満了を前に、借主側は契約更新のために必要となる印鑑登録証明書を貸主に送付し、当初は合意更新に向けた動きを見せていました。
- 2004/07/07 - 当初の賃貸借期間の満了
2年間の契約期間が終了。貸主側は更新契約書の作成を求めましたが、借主側は「法定更新(法律の定めによる自動更新)」を理由に、書類の作成に応じない姿勢へと転じました。
- 2004/09/02 - 法定更新による更新料拒絶の主張
借主側が貸主に対し、本件は当然に更新される(法定更新である)旨の書面を送付。これに伴い、更新料の支払いについても拒否する意向を明確にしました。
- 2004/10/07 - 内容証明郵便による支払督促
貸主が借主らに対し、内容証明郵便によって1週間以内に更新契約書の作成と更新料を支払うよう通知しましたが、借主らはこれに応じませんでした。
- 2005/02/18 - 口頭弁論の終結
裁判において双方の主張が出揃い、法定更新の場合でも契約時の更新料特約が有効かどうかが争点となりました。
- 2005/03/11 - 判決言い渡し
裁判所は、たとえ法定更新であっても更新料の特約は有効であると判断。被告らに対し、更新料9万2000円および遅延損害金の支払いを命じました。
実務上の学び
- 更新料支払特約の原則的な有効性: 賃貸借契約において、更新料を「新賃料の1か月分」とする特約は、借地借家法第30条が禁じる「借主に不当に不利な特約」には当たらないと解釈され、有効性が認められる傾向にあります。
- 法定更新時における特約の承継: 当事者間で合意に至らず法律の規定に基づき自動更新される「法定更新」の状態であっても、契約書に記載された更新料の支払特約は失効せず、借主は支払義務を負うものと判断されました。
- 合意更新の意思表示が与える影響: 更新手続きの過程で印鑑登録証明書を提出するなど、一度でも更新の意思を具体的に示していた事実は、後に法定更新を主張した場合であっても、特約を有効とする判断材料の一つとなり得ます。
- 更新料の金額の妥当性判断: 更新料が賃料の1か月分程度であれば、社会通念上高額すぎるとは認められにくく、契約締結時の合意に基づいた支払義務が肯定される可能性が高まります。
よくある質問
本件の賃貸借契約において、更新料に関してどのような合意がなされていましたか。
更新料 更新後の新賃料の1か月分を支払う。
賃料の1か月分を更新料とする規定は、借地借家法30条によって無効となりますか。
本件賃貸借契約における更新料支払義務の規定は,被告らにとって不利な特約ではあるが,賃料の1か月分を更新料とする本件の場合には,借地借家法30 条によって無効とするほど不利な特約とは認められない。
裁判所は、本件賃貸借契約の更新についてどのような事実認定を行いましたか。
本件賃貸借契約は結局法定更新されたものと認めるべきである。
法定更新の場合であっても更新料の支払義務に関する特約が有効とされる理由について、裁判所はどのように判示しましたか。
更新料の支払義務を特約により合意した当事者の意思は重視すべきであり,また更新料の額は家賃の1か月分相当であり, 高額なものでないと認められること,さらに前述したように被告Bは,原告からの 更新申出に対し本契約を更新するため印鑑登録証明書を原告に送付しているな ど,一時は,合意更新の意思を表明していたことなどを考え併せると,本件がた とえ法定更新であったとしても,本件特約は有効とすべきであると考える。
本件判決の主文において、被告らに命じられた支払内容を教えてください。
被告らは原告に対し,連帯して,金9万2000円及びこれに対する平成16 年10月19日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払 え。
判決文抜粋
- 被告らは原告に対し,連帯して,金9万2000円及びこれに対する平成16年10月19日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
- 原告は被告らとの間で,賃料1か月9万2000円,更新料を更新後の新賃料の1か月分とする賃貸借契約を締結した。その後,被告らは法定更新を理由に更新料の支払に応じなかった。
- 更新料支払の条項は賃借人にとって不利な特約であるから借地借家法30条により無効である。また,法定更新の場合には,更新料の支払義務は否定されるべきである。
- 更新料支払義務の規定は,被告らにとって不利な特約ではあるが,賃料の1か月分を更新料とする本件の場合には,借地借家法30条によって無効とするほど不利な特約とは認められない。
- 更新料の支払義務を特約により合意した当事者の意思は重視すべきであり,更新料の額は家賃の1か月分相当で高額なものではない。本件がたとえ法定更新であったとしても,本件特約は有効とすべきである。
- 本件賃貸借契約に基づく更新料として,賃料の1か月分である金9万2000円の支払を求める原告の請求を認める。