同性パートナーと事実婚関係にあった女性が、相手の不貞行為による関係破綻で賠償を求めた訴訟
同性のパートナーと約7年間にわたり共同生活を送り、結婚式も挙げていた関係を「事実婚に準ずるもの」と認定。相手が別の人と性的関係を持ったことが、法的に守られるべき利益を侵害したとして慰謝料の支払いが認められました。
基本情報
- 判決結果
- 原告一部勝訴
- カテゴリ
- 男女トラブル・家庭問題
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 判決日
- 2020-03-04
裁判所・判決日: 東京高等裁判所 / 2020-03-04
判決結果: 原告一部勝訴
カテゴリ: 男女トラブル・家庭問題
主な争点
- 同性間の事実婚関係に対する法的保護の可否 - 同性のカップルが共同生活を営む関係(同性の事実婚)について、男女間の内縁関係と同様に法的保護の対象となるか、あるいはそれに準ずる法的保護に値する利益が認められるかが争点となった。
- 不法行為(権利侵害)の成否 - 控訴人が第三者と性的関係を持ったことが、被訴人との間の法的保護に値する関係を破壊するものとして、不法行為を構成するか否かが争われた。
- 関係の実態および継続期間の評価 - 同棲期間の長さや、二人の関係が対等なパートナーシップであったか、あるいは一方が従属する関係であったかといった、共同生活の実態に関する事実認定が争われた。
- 損害賠償額の妥当性(不貞行為の回数等の評価) - 不貞行為が1回のみであるという控訴人の主張や、その他の事情を考慮した上で、認定された慰謝料(100万円)および弁護士費用相当額が妥当かどうかが争点となった。
裁判所の判断ロジック
- 同性カップルの法的保護: 同性同士であっても、男女の内縁関係(事実婚)と同様の共同生活を営んでいる場合には、法律上の婚姻に準ずる関係として、法的な保護の対象になり得ると判断されました。
- 婚姻に準ずる関係の認定: 長期間の同棲生活や結婚式の挙行といった実態があることから、単なる交際ではなく、互いに協力して生活を営む意思を持った「婚姻に準ずる関係」にあると認められました。
- 不貞行為による権利侵害: 婚姻に準ずる関係にある一方が第三者と性的関係を持つことは、共同生活の平和を維持する法的利益を侵害するものであり、不法行為に基づき賠償責任が生じるとされました。
時系列
- 2010/02 - 共同生活(同棲)の開始
控訴人と被控訴人が、同性のカップルとして共同生活を開始しました。
- 2015/01 - 日本国内での結婚式の挙行
二人は日本で結婚式を挙げ、社会に向けた婚姻意思の表示とともに、その後約2年間にわたり共同生活を継続しました。
- 2017/01/03 - 性的関係の発生と関係の破綻
控訴人が第三者と性的関係を持ったことにより、控訴人と被控訴人の同性の事実婚関係が破綻しました。
- 2017/01/04 - 不法行為に基づく損害賠償請求の起点
不法行為日の翌日として、遅延損害金の起算日となりました。被控訴人が慰謝料等の支払いを求めて提訴しました。
- 不明 - 第1審判決(原判決)
裁判所は、同性カップルの関係に「内縁関係に準じた法的保護」を認め、控訴人に対し110万円の支払いを命じました。
- 不明 - 控訴および附帯控訴の提起
第1審の判決を不服とし、控訴人は敗訴部分の取り消しを求めて控訴し、被控訴人は賠償額の増額を求めて附帯控訴を行いました。
- 不明 - 控訴審判決(本件判決)
高等裁判所は、双方の控訴をいずれも棄却しました。第1審の判断を維持し、同性間の事実婚に対する法的保護の利益を認めました。
実務上の学び
- 同性パートナーシップも法的保護の対象となり得ます: 同性同士のカップルであっても、長期間の同居や互いの協力関係など、婚姻に準ずる生活実態がある場合には、法律上の保護を受けられる可能性があることが示されました。
- 関係を破綻させる行為には損害賠償責任が発生する: 共同生活を送るパートナーとしての誠実義務に反し、不貞行為によって関係を破綻させた場合、法的な損害賠償(慰謝料)を支払う義務が生じるリスクがあります。
- 共同生活の実態が法的保護の判断基準となること: 結婚式の挙行や家族への紹介、数年にわたる同居生活など、周囲からもパートナーとして認められるような客観的な事実が、法的保護を判断する基準となります。
- 一度の不貞行為でも重大な結果を招く可能性がある: 浮気が一度きりであっても、それが長年の共同生活を解消させる決定的な原因となった場合には、不法行為として認められ、慰謝料などの支払いが必要になることがあります。
よくある質問
この控訴審における主文(結論)はどのような内容ですか。
1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。
本件における主な争点は何ですか。
「同性カップルの関係は内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか」が争点であったのに,原判決は「内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められる」と判断している。……争点2 控訴人が故意又は過失により被控訴人の権利又は法律上保護される利益を侵害したか否か
被控訴人は、当審において請求額をどのように変更しましたか。
被控訴人は,当審において,第1審で求めていた合計637万4000円の損害賠償請求を慰謝料300万円及び弁護士費用相当額10万円の範囲に減縮した。
同性婚の問題に関し、控訴人は国内外の現状を踏まえてどのような主張をしていますか。
海外の現状(同性婚や登録パートナーシップ等の制度を持つ国は,控訴人と被控訴人が同棲を始めた平成22年2月には7か国にすぎず,令和元年5月時点で20パーセントにすぎない。)や日本の現状(同性パートナーシップ制度を採用する自治体は,平成31年1月1日時点で1.57パーセントにすぎず,控訴人と被控訴人が同棲をしていた当時はもっと少なかった。)からすれば,同性婚の問題は立法によって解決すべき問題である。
原審(第1審)はどのような判断を下しましたか。
原審は,被控訴人の請求のうち,控訴人に対する慰謝料100万円と弁護士費用相当額10万円の合計110万円及びこれに対する遅延損害金の支払請求の限度で認容し,控訴人に対するその余の請求及び1審相被告に対する請求をいずれも棄却した
判決文抜粋
- 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。
- 約7年間にわたり同居し、米国及び国内で結婚式を挙げ、その関係を周囲に明らかにしていた。また、2人で子を育てることを計画し、マンションの購入を進めるなど、社会観念上夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていた。
- 本件関係は、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあったということができる。したがって、少なくとも民法上の不法行為に関して、互いに、婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する。
- 同性婚を認める国やパートナーシップ制度を採用する自治体が増えている近時の社会情勢等を併せ考慮すれば、同性同士であることのみをもって、法律上保護される利益を有することを否定することはできない。
- 控訴人が被控訴人以外の者と性的関係を結んだことにより、本件関係の解消をやむなくされた場合、婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益が侵害されたものとして、その損害の賠償を求めることができる。
- たとえ挿入を伴う性行為を行っていないとしても、複数回にわたりペッティング(挿入を伴わない性行為)を行った事実に照らせば、控訴人が第三者と性的関係を結んだと認めることは妨げられない。