適格消費者団体が予備校を提訴!『中途退学後の授業料不返還』条項を差し止め

適格消費者団体が、大学受験予備校に対し、中途退学した学生への授業料不返還条項の差し止めを求めました。裁判所は、まだサービスを受けていない期間の授業料を返さないとする条項は、消費者にとって不当に不利益であり無効であると判断し、予備校に当該条項の使用停止と契約書破棄を命じました。

基本情報

判決結果
原告一部勝訴
カテゴリ
消費者トラブル
裁判所
大分地方裁判所民事第2部
判決日
2014-04-14

裁判所・判決日: 大分地方裁判所民事第2部 / 2014-04-14

判決結果: 原告一部勝訴

カテゴリ: 消費者トラブル

主な争点

  • 大学受験予備校における中途退学後の授業料不返還条項の有効性 - 大学受験予備校の在学契約において、中途退学等による在学契約解除後の期間(被告がいまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料を返還しないとする条項が、消費者契約法9条1号に照らして無効であるか否かが争点となった。原告である適格消費者団体は当該条項の無効を主張し、その使用差し止めを求めた。

裁判所の判断ロジック

  • 不返還条項の性質: 大学受験予備校の「中途退学等による校納金返金は原則行わない」とする条項は、在学契約の解除に伴い、消費者が予備校の役務提供を受けていない期間の授業料を事業者が返還しないとするものであり、実質的に契約解除による損害賠償の予定または違約金の定めと評価されました。
  • 未提供役務の対価: 消費者契約法第9条第1号は、事業者側に生じる平均的な損害額を超える損害賠償の予定または違約金条項を無効と定めています。本件の不返還条項は、消費者が受けていない役務(授業)に対応する授業料についても返還しないとしており、これは事業者に生じる平均的な損害額を著しく超えるため、その超過部分において無効と判断されました。

時系列

  1. 2012 - 大学受験予備校の入学規程に不返還条項が存在

    被告が運営する大学受験予備校(北九州予備校)の平成24年度入学規程において、「中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。」という不返還条項が規定されていました。

  2. 2012/02/28 - 適格消費者団体としての認定

    原告が、消費者契約法に基づき内閣総理大臣から適格消費者団体としての認定を受けました。これにより、不当な契約条項に対する差止請求権を行使する資格を得ました。

  3. 2012 - 不返還条項の使用差止等請求訴訟の提起

    適格消費者団体である原告は、被告が規定する中途退学後の授業料全額不返還条項が消費者契約法に違反し無効であると主張し、当該条項の使用差止め等を求める訴訟を提起しました。(平成24年(ワ)第499号)

  4. 2014/02/03 - 口頭弁論終結

    裁判所において、原告と被告の間で審理が進められ、事実および法律上の争点に関する主張と証拠調べが完了し、口頭弁論が終結しました。

  5. 2014/04/14 - 大学受験予備校の不返還条項に対する判決言渡し

    裁判所は、被告が消費者との間で、役務提供を受けていない期間に対応する授業料を在学契約の解除時に全額返還しないとする条項を含む契約の申込みまたはその承諾の意思表示を行ってはならないこと、および該当する契約書雛型を破棄することを命じる判決を言い渡しました。

実務上の学び

  • 未提供役務分の料金返還可能性: 予備校や類似サービスで中途解約があった場合、未提供部分に対応する料金の返還が問題となりうることが示されています。契約書の不返還条項も、消費者契約法により無効となる場合があります。
  • 返金しない条項の有効性判断: 「原則として返金しない」との条項であっても、サービス提供前の料金を全額返還しない内容は、不当な違約金と評価される可能性があることが示されています。
  • 消費者契約法9条1号の役割: この判決は、事業者に生じる平均的な損害額を超える部分の違約金条項が無効となりうることを通じて、消費者契約法9条1号の役割を示しています。
  • 適格消費者団体による差止請求の意義: 適格消費者団体による差止請求が、多数の消費者に共通する不当な契約条項の是正手段として機能しうることが示されています。

よくある質問

本件判決の主文は何を命じていますか?

1 被告は,消費者との間で,大学受験予備校の在学契約を締結するに際し,「中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。」との条項等により,被告が消費者から受領した金員のうち授業料に相当する金員を在学契約の解除時に全額返還しないとする条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行ってはならない。 2 被告は,前項記載の内容の条項が記載された契約書雛型が印刷された契約書用紙を破棄せよ。

本件の原告はどのような団体ですか?

原告は,平成24年2月28日,法13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である。

本件の被告はどのような事業者ですか?

被告は,教育基本法及び学校教育法に従い,学校教育を行うことを目的とする学校法人であり,北九州市,山口市,長崎市,福岡市,大分市,鹿児島市,熊本市及び東京都等において,「北九州予備校」という名称の大学受験予備校を設置・運営している。被告は,法2条2項の事業者である。

北九州予備校の平成24年度入学規程によると、年間学費には何が含まれますか?

年間学費には,1・2学期の授業料,校内必須模試受験料等の必要な経費を含む。年間学費に含まれるもの 1学期及び2学期の必修授業授業料及び午後の特定大対策授業・英語・数学・国語の学力別強化授業等の選択授業授業料(公開講座を除く),校内オリジナルの必須模試受験料(進研模試等の外部模試受験料は含みません),毎朝のセンター対策(リスニング含む)代,プリント代,毎月の家庭通信連絡費,夏期定期健康診断費,進路指導費,カリキュラム内での修得度テスト代,確認テスト代,各種特別添削費,各種行事等(一部希望参加分を除く)の費用。

北九州予備校の平成24年度入学規程における年間学費の具体的な金額はどう定められていますか?

年間学費は以下のとおりとする。 a 国公立大各系コース 入学金10万円,授業料59万5000円,年間合計69万5000円 b 私立大各系コース 入学金10万円,授業料58万円,年間合計68万円 Felixは別途料金を定める。

判決文抜粋

  • 被告は,大学受験予備校の在学契約を締結する際,『中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。』との条項等により,消費者から受領した金員のうち授業料に相当する金員を在学契約の解除時に全額返還しないとする条項を含む契約の申込みまたは承諾の意思表示を行ってはならない。
  • 被告は,前項の内容の条項が記載された契約書雛型が印刷された契約書用紙を破棄せよ。
  • 適格消費者団体である原告が,大学受験予備校を運営する被告に対し,『一定期間経過後に在学契約が解除された場合,校納金全額を返還しない』とする不返還条項のうち,解除後の期間に対応する授業料部分が消費者契約法9条1号により無効であると主張し,当該条項の使用停止を求めた事案。
  • 本件の争点は,中途退学による校納金不返還条項のうち,役務提供前の期間に対応する授業料相当額の返還をしないとする部分が,消費者契約法9条1号に定める『平均的な損害』を超えるものとして無効となるかである。
  • 中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。
  • 本件不返還条項の授業料に関する部分は,消費者が役務の提供を受けていない期間の授業料相当額につき,損害賠償額の予定または違約金を定めた条項であるといえる。

判決文PDF(出典)