消費者団体と利用者が携帯電話の「2年縛り」解約金の差し止めを求めた事件

携帯電話のいわゆる「2年縛り」契約において、解約時に一律で請求される9,975円の解約金が適法か争われました。裁判所は、事業者の損害を上回る金額の設定を不当とし、条項の使用差し止めと一部利用者への返還を命じました。

基本情報

判決結果
原告一部勝訴
カテゴリ
消費者トラブル
裁判所
京都地方裁判所
判決日
2012-07-19

裁判所・判決日: 京都地方裁判所 / 2012-07-19

判決結果: 原告一部勝訴

カテゴリ: 消費者トラブル

主な争点

  • 消費者契約法9条1号に定める「平均的な損害の額」の超過性 - 2年間の定期契約を中途解約する際に発生する9,975円の解約金が、当該契約の解除に伴い被告に生ずべき「平均的な損害の額」を超え、同条項が無効となるか否か。
  • 自動更新後の解約金条項の有効性(消費者契約法10条等) - 2年の契約期間経過後に自動更新された後、さらに中途解約する場合に解約金を課す条項が、消費者の利益を不当に害するものとして消費者契約法10条等に抵触し無効となるか否か。
  • 適格消費者団体による差止請求権の成否 - 消費者契約法12条に基づき、内閣総理大臣の認定を受けた原告(適格消費者団体)が、被告に対して不当な契約条項の使用差し止めを求めることができる要件を満たしているか。

裁判所の判断ロジック

  • 平均的な損害の制限: 消費者契約法に基づき、解約に伴い事業者に生じる「平均的な損害」の額を超える違約金条項は無効であると判断されました。
  • 自動更新後の違約金: 2年間の契約期間が経過し、自動更新された後に発生する解約金については、合理的な理由がない限り認められない可能性が示されました。
  • 不当な条項の差止め: 適格消費者団体による差止請求が認められ、将来にわたって消費者が不当な違約金を課されることを防ぐ判断が下されました。

時系列

  1. 2010年頃(平成22年) - 適格消費者団体による差止請求訴訟(第1事件)の提起

    内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が、auの携帯電話契約における「2年縛り」の解約金条項は消費者契約法に反し無効であるとして、使用の差止めを求めて提訴しました。

  2. 2011年3月(平成23年) - 個人原告らによる不当利得返還請求訴訟(第2事件)の提起

    契約途中の解約時に9,975円の解約金を支払った個人利用者たちが、その支払いは無効な条項に基づくものであるとして、支払った金額の返還を求める訴えを起こしました。

  3. 2012年2月(平成24年) - 追加の不当利得返還請求訴訟(第3事件)の提起

    第2事件と同様に、解約金を支払った別の個人利用者が、被告である通信会社に対して不当利得の返還を求める訴訟を提起しました。

  4. 2012/04/26 - 口頭弁論の終結

    解約金条項の有効性や、その金額が事業者に生じる「平均的な損害」を超えているかなど、一連の事件に関する裁判所での審理が終了しました。

  5. 2012/07/19 - 判決の言渡し

    裁判所は、被告に対し今後の解約金条項の使用を差し止めるよう命じました。また、個人原告の一部に対しても解約金相当額の返還を命じる判決を下しました。

実務上の学び

  • 消費者契約法第9条1号による違約金の制限: 契約の解約に伴い消費者が支払うべき違約金や損害賠償額を定める条項において、当該事業者に生じる「平均的な損害の額」を超える部分は無効とされる。本判決では、特定の定期契約における解約金条項の一部について、この規定に基づき差し止めが認められた。
  • 消費者の利益を一方的に害する条項の無効性: 消費者契約法第10条により、民法等の任意規定と比較して消費者の権利を制限し、または消費者の義務を重くする条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効となる。自動更新後の解約金の設定などがこの検討対象となり得る。
  • 適格消費者団体による差止請求制度の機能: 消費者全体の利益を保護するため、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体には、不当な契約条項の使用等に対し、その停止や予防を求める差止請求権が認められている。本事例は、この制度を通じて特定の通信サービス契約条項の使用差し止めが命じられた事例である。
  • 無効な条項に基づく支払金の不当利得返還: 消費者契約法等の規定により契約条項が無効と判断された場合、その条項を根拠として支払われた金員は、法律上の原因のない支払いとして不当利得返還請求の対象となり、事業者に対して返還を求める根拠が生じる。

よくある質問

本件の主文第1項において、被告に対してどのような命令が下されましたか?

被告は,消費者との間で,au通信サービス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項を内容とする意思表示を行ってはならない。

第1事件において、原告法人はどのような法的根拠に基づき、どのような請求を行いましたか?

消費者が2年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が,法9条1号及び10条により無効であると主張して,法12条3項に基づき,被告が消費者との間で上記定期契約を締結する際,上記解約金条項を内容とする意思表示をすることの差止めを請求する

第2事件及び第3事件(不当利得返還請求事件)において、個人原告らは何を求めていますか?

被告に対して,不当利得返還請求権に基づき,上記解約金相当額及びこれに対する訴状送達日の翌日を起算日とする民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める

第1事件の請求の趣旨第1項において、差止めの対象として記載された「2年の定期契約」に関する具体的な事項は何ですか?

au通信サービス契約における2年の定期契約を締結した消費者は,同契約が自動更新される前に,被告又は消費者が同定期契約を解除したときは,被告に対し,9975円(消費税転稼分を含む。)以上の解約金を支払う。

裁判所は、原告Aおよび原告Eに対し、被告が支払うべき金額をどのように判示しましたか?

被告は,原告Aに対し,1975円及びこれに対する平成23年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。被告は,原告Eに対し,5975円及びこれに対する平成23年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

関連する論点

判決文抜粋

  • 被告は,消費者との間で,au通信サービス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項を内容とする意思表示を行ってはならない。
  • 被告は,原告Aに対し,1975円(中略)及びこれに対する(中略)年5分の割合による金員を支払え。被告は,原告Eに対し,5975円及びこれに対する(中略)金員を支払え。原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
  • 適格消費者団体である原告法人が,(中略)消費者が2年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が,消費者契約法9条1号及び10条により無効であると主張して,(中略)当該条項を内容とする意思表示をすることの差止めを請求する事案。
  • 本件定期契約は,(中略)約2年間の定期契約である。契約者は,本件定期契約を解約する際には,更新日の属する月に解約する場合等(中略)を除き,被告に対し,契約解除料(解約金)として9975円を支払わなければならない。
  • 本件解約金条項に係る解約金の額が,解約に伴い被告に生じる「平均的な損害」(消費者契約法9条1号)の額を超過するか否か。
  • 本件定期契約は,基本使用料金の割引という利益を消費者に付与するものではなく,(中略)基本使用料金の累積割引額を本件定期契約の中途解約に伴う損害とみることはできない。携帯電話事業は,大量の新規契約,解約が予定されていることから,解約に伴う逸失利益は平均的損害には含まれない。

判決文PDF(出典)