芸能プロダクションが雑誌社を提訴、タレント記事の携帯サイト無断転用で賠償認める
芸能プロダクションが、雑誌掲載のために提供した所属タレントのインタビュー記事や写真を、出版社が無断で有料携帯サイトに転用したことの是非が争われました。裁判所は、利用範囲の合意を超えた出版社の債務不履行(契約違反)を認めました。
基本情報
- 判決結果
- 原告一部勝訴
- カテゴリ
- 著作権・AI
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 判決日
- 2003-11-28
裁判所・判決日: 東京地方裁判所 / 2003-11-28
判決結果: 原告一部勝訴
カテゴリ: 著作権・AI
主な争点
- 被告の債務不履行責任の有無(掲載合意の範囲) - 原告と被告の間で、タレントのインタビュー記事や肖像写真等を、雑誌掲載以外に携帯電話サイト(本件サイト)へ掲載すること、およびその期間についてどのような合意が成立していたか。
- 著作権および肖像権(パブリシティ権)侵害の有無 - 本件サイトへのインタビュー記事、肖像写真、音声メッセージの掲載が、原告の有する著作権、およびタレントの肖像が持つ経済的価値を独占的に利用する権利(パブリシティ権)を侵害する不法行為にあたるか。
- 損害の発生および数額の算定 - 被告の義務違反または権利侵害によって原告が被った損害額はいくらか。原告が請求した1500万円の妥当性が争点となった。
裁判所の判断ロジック
- 掲載承諾の有効範囲: 雑誌への掲載を承諾した事実は、有料サイトでの長期間にわたる二次的な利用までを包括的に許諾したものとは認められないとされました。
- 肖像等の経済的価値: 芸能人の肖像や氏名には顧客を惹きつける経済的な価値(パブリシティ権)があり、これらを無断で営利目的に利用する行為は権利侵害を構成します。
- 無断利用による侵害: 取材で得た記事や音声を合意なく別の媒体で公開し続けることは、契約上の義務に違反するだけでなく、著作権や肖像権の侵害にも該当すると判断されました。
時系列
- 2002/10/01 - 取材の申し込みと合意
被告(白夜書房)が、雑誌「オーディション」12月号への掲載のため、原告(アオイコーポレーション)所属タレントAのインタビューと撮影を申し込み、原告がこれを承諾しました。
- 2002/10/15 - インタビューおよび写真撮影の実施
タレントAがマネージャーと共に被告本社を訪れ、編集担当者やカメラマンらによるインタビューと肖像写真の撮影が行われました。
- 2002/10/28 - 携帯サイトでのコンテンツ掲載開始
被告は雑誌の発売に合わせ、運営する有料携帯サイト「オーディション・コム」にて、タレントAのインタビュー記事、肖像写真、音声メッセージの掲載を開始しました。
- 2003/06/07 - 携帯サイトでの掲載終了
約7ヶ月間にわたり、被告の携帯サイト上でタレントAのコンテンツが継続して公開されていました。
- 2003/08/13 - 損害賠償請求と遅延損害金の起算
原告が、雑誌掲載の合意を超えた無断利用であるとして損害賠償を請求。判決における遅延損害金の発生日となりました。
- 2003/11/11 - 口頭弁論の終結と判決
裁判における当事者双方の主張が終了しました。裁判所は被告に対し、100万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
実務上の学び
- 媒体ごとの利用許諾範囲の明確化: 本判決では、雑誌などの特定媒体への掲載を目的として取得されたインタビュー記事や肖像写真について、別媒体での利用には別途権利者からの承諾が必要であると判示された。
- 利用期間に関する合意の限界: 本判決では、特定の号の雑誌販売期間に合わせた一時的な利用許諾が、数か月にわたる長期間のアーカイブ掲載や継続的な公開まで当然に含むと解釈することはできないと判断された。
- 許諾対象となる情報の種類の特定: 本判決では、記事や写真の掲載について合意があった場合でも、取材過程で取得された「音声メッセージ」など当初の利用目的に含まれていない情報の公開・利用は、契約上の義務に違反すると判断された。
- 二次的利用における収益性の評価: 本判決では、情報の利用先が有料会員制サイトなど収益を伴う媒体である場合、通常の広報活動の範囲を超えた経済的利用と評価され、無断掲載が損害賠償の根拠となり得ると判示された。
よくある質問
この裁判の主文において、被告が支払いを命じられた金額はいくらですか。
被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成15年8月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
原告である株式会社アオイコーポレーションは、どのような業務を行っている会社ですか。
原告は,厚生労働大臣認可の芸能プロダクションであり,その業務の一部として,その所属,契約芸能タレントをマスメディアの求めに応じ,テレビ,雑誌等のインタビューを受ける形で芸能タレントの出演に係る芸能に関する各種の権利,情報を提供する等の経済取引活動を行っている。
タレントAと原告との契約において、肖像や著作権に関する権利はどのように定められていますか。
Aの氏名,写真,肖像,筆跡及び経歴等についての財産上の権利を原告が独占的に有し,② 第三者が企画,構成,演出したコンサート,映画,演劇,テレビ,ラジオ,コマーシャルへの出演その他の出演業務の遂行により制作された著作物,商品その他のものに関する著作権等一切の権利は原告に帰属するものとされている
被告が運営する本件サイト「オーディション・コム」にAのコンテンツが掲載されていた期間はいつからいつまでですか。
平成14年10月28日ころから平成15年6月7日ころまでの間
原告が主張している請求の法的根拠は何ですか。
① 主位的に,上記インタビュー記事等を本件雑誌12月号にのみ掲載する旨の合意に反したという債務不履行,又は上記雑誌の販売期間である1か月に限り上記インタビュー記事等を本件サイトに掲載する旨の合意に反したという債務不履行を理由として,② 予備的に,上記インタビュー記事及び音声メッセージに係る著作権侵害並びに上記肖像写真に係る肖像権侵害に基づく不法行為を理由として
判決文抜粋
- 被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成15年8月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。原告のその余の請求を棄却する。
- 芸能プロダクションである原告は,出版社である被告との間で,所属タレントAのインタビュー記事等を雑誌「オーディション」に掲載することを承諾した。被告はさらに携帯サイトへの掲載も申し入れ,掲載期間は「雑誌の発売期間と同じ位(約1か月)」になる旨を説明していた。
- 被告がタレントAのインタビュー記事等を,当初の合意期間(約1か月)を超えて約7か月余にわたり携帯サイトに掲載し続けたことについて,債務不履行責任の有無、および著作権・肖像権侵害の有無が争点となった。
- 被告のサイト責任者は,原告に対し掲載期間は雑誌の発売期間と同じ位となる旨答えており,原告もこれを前提に承諾したと認められる。被告が1か月をもって掲載を抹消することを失念し,7か月余にわたり掲載を継続した行為は,過失による債務不履行責任を構成する。
- 音声メッセージは単なる挨拶であり著作物とはいえない。また,肖像写真についても当初は掲載を承諾していたものであり,社会的評価を低下させるものではない。本件は不法行為(権利侵害)ではなく,合意期間を超えた掲載による債務不履行の問題となる。
- 被告が携帯サイトにより得た利益や,タレントAの人気,掲載期間が合意を大幅に超えたことなど諸般の事情を総合的に考慮し,被告の債務不履行によって原告に生じた損害額は100万円と認めるのが相当である。